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猫の口の中をよく見せて!~歯の数や種類、舌の役割から味覚までを図解

 猫はライオンと同じネコ科動物です。体は小さいですが、鋭い牙を持ち、よくよく見ると小ライオンといった印象すら受けます。以下では猫の口の中にある歯や舌、そして味を感じる機能である味覚(みかく)などについて解説していきます。なお、猫の口内の健康チェックは歯・口の変化・異常を、猫の口腔疾患に関しては猫の歯・口の病気をご参照ください。

猫の歯

 猫の歯は、乳歯が26本で永久歯が30本からなります。犬の永久歯42本に比べるとずいぶん少ないですが、猫の頭蓋骨はかなり小さいため、あまりたくさんの歯を詰め込むことができないのです。猫の乳歯と永久歯が生えそろう時期はおおむね以下の通りです。
猫の永久歯が生えそろうまで
  • 生後15-20日~生後30-35日26本の乳歯が生えそろう
  • 生後3~5ヶ月乳歯が抜け落ちる
  • 生後5~6ヶ月永久歯が生えそろう
 永久歯の各部名称、及び主な役割は下図です。 猫の歯と名称 猫の歯の名称と本数、および主な役割一覧表 ライオンの犬歯表面に見られる血溝(blood groove)  合計30本ある永久歯の中でも、上下合わせて4本ある犬歯(けんし, canine tooth)は獲物を捕らえるときに役立ちます。この歯は横幅が広く平らであるため、ちょうど「くさび」としての機能を果たします。この「くさび」を獲物の首筋にグサリと刺し込むと、うまい具合に脊髄(せきずい)に当たり、効率的に切断することができるのです。脊髄とは、背骨の中を通っている神経線維の束で、これを切断された動物は即死してしまいます。なお犬歯の根元には特殊なセンサーがあり、獲物の脊髄を正確に噛み切れるよう、歯の方向を微調整していると言われています。また犬歯の表面にある小さな溝は「血溝」(blood groove)と呼ばれるもので、獲物から流れ出た血が歯に付着しないよう、効率的に流す下水溝のようなものだと考えられています。ただし猫のものは、ライオンのキバで見られるほど明瞭ではありません。
 門歯(もんし)は切歯(せっし)とも呼ばれ、上下とも6本ずつあります。この歯の裏にはヤコブソン器官の入り口があり、フレーメンによって大きく開き、フェロモンを取り込みやすくします。またグルーミングの際は櫛(くし)のような働きをします。
猫の奥歯は鋭く尖っており、上下で交差するようにかみ合う。その結果、ちょうどハサミのように物を切断するときに役立つ。  一般的に「奥歯」と呼ばれている臼歯(きゅうし)は、「前臼歯」と「後臼歯」に分かれています。しかしこれらは、私たちの奥歯のように上の歯と下の歯の面がピッタリとかみ合いません。猫の臼歯は先端がとがっており、なおかつ上下の歯が前後で微妙にずれた構造になっているため、ちょうどハサミのような役割を果たします。これは、猫が肉を噛みちぎることに特化した構造の歯を発達させた結果でしょう。また上顎の「後臼歯」はほとんどお情け程度にしかついておらず、見分けることすら困難です。
 なお、猫の歯が茶色く変色しているときは歯周病、およびピンク色に変色しているときは歯根吸収(しこんきゅうしゅう)という猫特有の病気である可能性がありますので、歯磨きの途中に発見した場合は獣医さんに診てもらいましょう。 猫の歯磨きの仕方

猫の舌

 猫に手をなめられたとき、独特の「ざらっ」とした感じがして驚いた人も多いのではないでしょうか?猫の舌のあのザラザラにはちゃんとした意味があるのです。

猫の舌の役割

 以下では猫の舌がもつ代表的な機能をご紹介します。味を感じる以外では、「ブラシ」、および「ひしゃく」としての役割が重要です。

毛をからめとるブラシ

 猫の舌の中央はざらざらしており、のどの奥に向かってびっしりと突起(とっき)が生えています。「糸状乳頭」(しじょうにゅうとう)とも呼ばれるこの突起は、毛づくろいする際のブラシとして、また肉を骨からそぎ落とすときのスプーンかわりとして機能します。 猫の舌の中央はざらざらしており、のどの奥に向かってびっしりと突起(とっき)が生えている  猫が自分の舌で絡め取った体毛は、掃除機内のゴミ溜め袋のように、胃の中で大量にたまってしまうことがあります。通常であれば吐き出したり糞として排出しますが、余りにも大きくなりすぎた場合は毛球症(もうきゅうしょう)という病気に発展することもありますので、飼い主はまめなブラッシングなどで予防してあげたいところです。 猫のブラッシング  また近年、バイオミミクリ(生物模倣)の一環として、猫の舌を模した掃除機というものが開発され、話題を呼んでいます。これは、掃除機内部のスクリュー表面に猫の舌のような細かい突起をつけることにより、吸い込んだゴミを絡め取って膨張を抑えるというものです。

水を飲むときのひしゃく

 これまで多くの科学者たちが、猫の舌全体にある突起が水飲みに役立っていると推測してきました。しかし最新の研究により、猫の舌は水面に近づくにつれて裏側に曲がりはするものの、水面には舌先しか触れていないことが判明しました(2010年/マサチューセッツ工科大学、通称MITの土木工学者Roman Stocker氏の研究より)。研究により判明した事実は以下です。
猫の舌の機能
  • ネコの舌は秒速76.2センチメートルという驚くべき速さで動く
  • ネコは舐める動作を1秒間に3、4回繰り返す
  • 1回の動作でおよそ0.14ミリリットルの液体を飲む
  • 猫の舌は水面に舌先しか触れていない
 猫が水を飲むメカニズムに関してRoman Stocker氏は「重力と慣性のバランスがちょうど取れて、水柱の大きさが最大になるタイミングがある。そのときに、ネコは舐める動作を行なうのだ」と説明しています。
猫が水を飲むメカニズム
 水面に触れた猫の舌先が口の中に戻るとき、液体が舌に引っ張られて水柱ができる。この水柱は、液体を地上に引き戻そうとする重力と、移動する物体は静止させられるまで動き続けるという慣性による力のバランスによって生じている。最初は慣性のほうが大きいので、ネコの舌とともに水柱がもりあがって行くが、次第に重力が優勢になり、水は入れ物のほうに落ちて行く(Roman Stocker)。 元動画は⇒こちら

猫舌について

熱いものが苦手な人を猫舌といいますが、熱いものを食べる習慣を持っているのは、そもそも人間だけ。  猫の舌と聞くと「猫舌(ねこじた)=熱いものが苦手」を連想しますが、人間以外の動物で、獲物の体温である40℃を超える食物を口に入れる動物はほぼいないといってよいでしょう。ですから、猫だけがとりわけ熱いものが苦手なわけではなく、実は人間以外の動物はほぼ熱いものを口の中に入れることが苦手なのです。
 人間のように、熱いものを食べたり飲んだりすること自体が、動物界の中では異端な行動です。ですから、猫を始めとする動物から言わせれば、熱いものを好んで食べる風変わりな人間の特徴は「人舌」(ひとじた)と呼びたいところでしょう。
 ちなみに猫は、対象の温度が30~35℃くらいのときに最もガツガツエサを食べますが、35℃を超えたとたん、スイッチが切れたように急に食べるのをやめてしまいます。「猫舌」という言葉を考え付いた人は、ひょっとすると猫が温度に対してもつこうした極端なこだわりを観察していたのかもしれません。 猫の食生活

猫の口内の常在菌

 猫の口の中には「パスツレラ菌」、および「カプノサイトファーガ属菌」という常在菌(じょうざいきん)がいます。常在菌とは、寄生しているけれども症状を出さない無害な菌のことです。しかしこれらの菌は人間にも感染しうる人獣共通感染症(じんじゅうきょうつうかんせんしょう)を引き起こすこともありますので、予備知識として載せておきます。

パスツレラ菌

ネコの口腔には、約100%、爪には70パーセントの確率でパスツレラ属菌が常在菌として存在しているとも言われす。  犬や猫の口腔には、かなりの高率でパスツレラ属菌が常在菌として存在しています。犬や猫、および免疫力が正常な人において問題になることはありませんが、糖尿病やアルコール性肝臓障害といった基礎疾患で抵抗力が落ちている人においては、髄膜炎(脊髄を包んでいる膜に菌が入り込むこと)などを引き起こすこともあります。近年のペットブームにより、ペットから人間への感染が年々増加していますが、そのほとんどは噛み傷やすり傷から菌が侵入するという経路です。  パスツレラ症

カプノサイトファーガ属菌

 カプノサイトファーガ・カニモルサスという細菌は犬や猫などの口腔内に常在しており、咬まれたり、引っ掻かれたりすることで人間にも感染します。免疫機能の低下した人においては、敗血症や髄膜炎を起こし、ショックや多臓器不全に進行してしまうことがあります 。一般的な症状は、発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などです。
 なおこの感染症は、動物による咬傷事故等の発生数に対し、報告されている患者数が非常に少ないことから、極めて稀(まれ)にしか発生しないと考えられています。しかし日頃から、動物との過度のふれあいは避け(ペットとスプーンや食器を共用したり、手や顔などを好き放題なめさせるなど)、動物と触れあった後は手洗いを実行するに越したことはないでしょう。 カプノサイトファーガ属菌

猫の味覚

猫の舌の表面にある味蕾細胞の拡大図  成猫の舌の表面には約250個のキノコの形をした「茸状乳頭」(じじょうにゅうとう)があり、それぞれの乳頭には40~40,000個の味蕾細胞があります。「味蕾細胞」(みらいさいぼう)とは味に関する刺激を脳に伝える特殊な細胞のことです。しかし猫の味覚(みかく)は人間ほど繊細(せんさい)ではありません。人間は「甘い」・「辛い」・「しょっぱい」・「すっぱい」・「苦い」・「うまい」を細かく感じ分けることが出来ますが、猫が味わえるのはせいぜい「しょっぱい」・「苦い」・「酸っぱい」だけです。また味蕾細胞を含む乳頭は、全て舌の周辺部位のみで、中央はざらざらした突起(糸状乳頭)がついているだけで味を感じることは出来ません人間と猫の味覚違い~人間に比べて猫の味覚は鈍く、苦味に対しては敏感な反面、甘味を感じることができません。  猫は苦味に敏感です。特に、腐った肉の中に含まれる特定のアミノ酸を苦いと感じることが知られています。具体的にはトリプトファン、イソロイシン、アルギニン、フェニールアラニンなどですが、これらのアミノ酸は、私たち人間も苦いと感じる物質です。猫はこうした苦味センサーを発達させることにより、体にとってよくない腐肉を避けるという行動パターンを発達させてきたのでしょう。腐ったものを食べることで発症する「ボツリヌス中毒」に関し、猫における自然発症例が一つもないというのがその証拠です。
猫の舌は塩味に鈍感  苦味とは逆に、猫は塩味に鈍感です。本来、塩分に含まれるナトリウムは生きていく上で欠かせない物質ですので、それを感知するメカニズムが体に備わっていないというのは奇妙な話です。しかし犬や猫は、主に捕らえた獲物の肉を食べて進化してきました。獲物の体内には血液を含めた塩分が十分含まれていますので、「肉さえ食べていれば、塩分が不足することはない」という具合に、塩味を感じる能力を省略してしまったのかもしれません。
 一方、酸に対する感度は敏感なようです。肉の中に豊富に含まれる、リン酸、カルボン酸、ヌクレオチド三リン酸、ヒスチジンなどに対する受容器が確認されています。こうした酸は、「すっぱい」というより「旨い」として感知されている可能性もあります。
 フランスとイギリスからなる共同研究チームは2017年、猫の舌に含まれるアミノ酸受容器「T1R1/T1R3」の機能を調べるため、猫の「T1R1」を形成する遺伝子を大腸菌(E.coli)の中に組み込み、擬似的に猫の口の中を再現してみました(→詳細)。再現された猫のアミノ酸受容器(ネコ型T1R1-N末端)を元に、様々な種類のアミノ酸との結合を調べていったところ、少なくとも6種類のアミノ酸と結合する能力を持っていることが明らかになったといいます。人間にとっての旨味成分はLグルタミン酸とLアスパラギン酸の2つだけとされていますので、6種類ものアミノ酸と結合できる猫の舌は、人間よりも遥かに旨味に敏感である可能性が伺えます。
猫は甘味を感じるレセプターを持たない  最後に特筆すべきは、猫は甘味を感じないという点でしょう。犬では砂糖に反応するセンサーの数が最も多いのに対し、猫では全くないか、あってもごくわずかです。味覚に関するこの大きな違いは、犬と猫の食性がかかわっているものと思われます。つまり、犬では肉のほかに果物などを補助的に食料としてきたのに対し、猫では極端に肉ばかり食べてきたため、甘味を感じる必要性が無くなったということです。猫が甘味を感じないという事実は、私たち人間が超音波を聞き取れないことと同じなのかもしれません。「生きていく上で必要のない機能は捨てる」という戦略は、進化的に見ると確かに効率的とも言えます。
猫と甘味について
 2005年、アメリカのMonell Chemical Senses CenterとイギリスのWaltham Centre for Pet Nutritionにおいて行われた研究により、ネコ科動物の舌は他の哺乳動物とは異なっており、甘味を認識することができないことが判明しました。
 実験では、砂糖水と普通の水を数十匹のネコに与えたところ、どちらの水も同程度飲んだことが確認されたそうです。さらに猫のDNAを解析したところ、甘味を受容する器官を構成する二つのたんぱく質の内の一つ(T1R2)に対応する遺伝子が欠損してたとも。ですから猫に苦い薬を飲ませるとき、甘いシロップに混ぜたからと言って、積極的に口に入れてくれるわけではないようです。 Cats' Indifference toward Sugar
猫に青魚ばかり与えていると、イエローファットという病気になるので注意  日本においてはいまだに「猫は魚が好き」というイメージが若干残っていますが、どうやら欧米においてそのようなイメージはないようです。日本固有のこうしたイメージは、魚を食する機会が多かった昔の日本において、余った食材を頻繁に猫に与えていたために生じたものと思われます。つまり、魚を食べている猫の姿がいつの間にか日常の中に溶け込み、「猫=魚好き」という固定観念が生まれたというわけです。しかし、こうした思い込みに惑わされて猫に魚ばかり与えていると、黄色脂肪症(おうしょくしぼうしょう, イエローファット)という病気にかかる危険性がありますので、猫の食事は栄養素をバランスよく配分しましょう。 猫に必要な栄養