トップ猫の体猫の生理現象猫のくしゃみが止まらない!

猫のくしゃみを引き起こす病気

 正常な猫のくしゃみは通常単発で終わります。くしゃみがなかなか止まらなかったり、鼻から青っぱな(膿が混じった鼻水)が出ていたり、咳や目やにを伴っているときは何らかの病気にかかっている疑いがありますので、獣医さんに相談しましょう。 猫ウイルス性鼻気管炎でみられる目と鼻の症状 問診では「鼻水を伴っているか」「いつから出始めたか」「きっかけはあったか」「怪我はしたか」「持病はあるか」「使っている薬はあるか」などが聞かれますのであらかじめ頭の中でまとめておきます。
 猫のくしゃみを引き起こす代表的な病気は以下です。
くしゃみから考えられる病気
 くしゃみが感染症によって引き起こされている場合、くしゃみだけが症状として現れるということは稀で、多くの場合その他の症状が併発します。例えば猫カリシウイルス感染症の場合は「くしゃみ+口内炎・舌炎」、猫クラミジア感染症の場合は「くしゃみ+目やにをともなう結膜炎」、猫ウイルス性鼻気管炎の場合は「くしゃみ+結膜炎や角膜炎」などです。
 猫のくしゃみが止まらないという場合は目、鼻、口の中などその他の部分もよく観察し、獣医さんに伝えましょう。

猫のくしゃみの原因は?

 猫のくしゃみを引き起こす原因としては、主に以下のようなものがあります。

アレルギー性鼻炎

 アレルギー性鼻炎の場合、免疫反応を刺激する何らかのアレルゲン(抗原)が鼻の中に入り込むことによって炎症が引き起こされます。発症期間はアレルゲンによって季節性~通年性で、症状はくしゃみ、鼻づまり、鼻のむずむず感、さらさらした鼻水、後鼻漏などです。最後に挙げた「後鼻漏」(こうびろう)とは鼻水が前方ではなく後方に流れ込み、咳などを引き起こす現象のことを指します。 【写真元】→Mhmulticare アレルギー性鼻炎の特徴は症状がアレルゲンの特徴に応じて季節性であること  アレルゲンによって肥満細胞から放出されるヒスタミンが炎症の主犯格です。その他鼻腔粘膜に埋め込まれている神経線維(C線維)からサブスタンスPと呼ばれる物質が放出され、これが慢性的な刺激の原因になっていると考えられています。さらにCGRP(カルシトニン産生性ペプチド)、VIP(血管作動性消化管ポリペプチド)、神経成長因子(NGF)、BDNF(脳由来神経栄養因子)も症状を悪化させる要因と考えられています。

感染性鼻炎

 感染性鼻炎の場合、鼻の中に細菌やウイルスといった病原体が入り込むことで炎症が引き起こされます。 ネコヘルペスの初感染時は眼症状、再発時は鼻や気管の症状がメインとなる  鼻炎は突如として現れ、多くの場合季節性(一時的)です。症状はくしゃみ、鼻づまり、ドロッとした膿性の鼻水(あおっぱな)で、発熱や筋肉痛を伴うという特徴があります。猫の場合「筋肉痛」を自己申告することができませんので、「なんとなく元気がない」とか「寝たまま動かない」といった症状として現れるでしょう。

血管運動性鼻炎

 血管運動性鼻炎の場合、アレルゲンや病原体を含まない何らかの刺激が鼻の中に入ったり、体内のホルモンがきっかけとなって炎症が起こります。刺激の具体例としてはホコリ、冷たい空気、高い湿度、染料、塩素水、香水、刺激物、タバコの煙、排気ガスなどが挙げられます。 室内にあるホコリや煙が鼻腔内の血管を拡張させて鼻炎が起こる  ホルモンの具体例としてはエストロゲン濃度の上昇や甲状腺機能低下症に伴う甲状腺ホルモンの低下などが挙げられます。主な症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまり、後鼻漏などです。その他の原因としては昇圧剤、ベータブロッカ、NSAIDsなどの投薬、老齢による粘膜下腺の萎縮などがあります。刺激物が原因になっている場合、突然発症してすぐに消えることもありますが、ホルモンが原因になっている場合、症状は通年性になります。
NARES
「NARES」とは「非アレルギー非感染性好酸球増多症候群」の頭文字をとった用語です。鼻腔(nare)にひっかけて「ネアズ」と読みます。アレルギーや感染症以外のさまざまな原因で引き起こされる鼻炎を示す広い用語ですが、好酸球が多く見られるという点を特徴としています。

異物性鼻炎

 異物性鼻炎の場合、鼻の中に肉眼で確認できるような大きな異物が入り込むことで炎症が引き起こされます。
 症状はくしゃみや鼻水で、通常は突如として発症します。人間における鼻腔内異物の具体例としてはボタン電池、消しゴム、こより、小石、ビーズ、豆、安全ピン、ワッシャ、ナッツ、スポンジ、チョーク、工作用粘土、木片、フック、コインなどがあります。こうしたものは面白半分で鼻に入れているうちに取れなくなったものが大半ですので、猫においてはそれほど心配しなくてもよいでしょう。また人間においては懐かしのアニメ「ハクション大魔王」で見られるように、こしょうやカプサイシン(とうがらしの辛味成分)によってもくしゃみを誘発することができますが、これらの物質はムズムズと同時に痛みも引き起こしますので、リアクション芸人でない限り真似しないほうが賢明です。
 猫の鼻腔内にも入り込む心配があるのは上記したような無生物ではなく生物の方です。具体的にはコバエ、アリ、ウジ(ハエの幼虫)、回虫などが挙げられます。

光くしゃみ反射

 光くしゃみ反射とは、目の中に光が入ることをきっかけとしてくしゃみが誘発される奇妙な現象のことです。少し強引な気もしますが、「日光強制眼科噴出症候群」の頭文字をとって「ACHOO」(アチュー)などとも呼ばれます(Nicholas Eriksson, 2010)。光を見た後1~10回のくしゃみを発し、その後24時間程度の不応期(反応しなくなる時間)が生じますので、太陽が出ている間ひっきりなしにくしゃみをするというわけではありません。
光くしゃみ反射
 以下でご紹介するのは太陽の光に反応してくしゃみが誘発される「光くしゃみ反射」を捉えた動画です。 元動画は⇒こちら
 古い文献では紀元前350年にギリシアの哲学者アリストテレスがこの現象について記載しており、現代の医学では常染色体優性遺伝する一種の体質であることがわかっています。ちなみに関連遺伝子の保有率は推定で人口の18~35%とのこと。
 1995年に行われた調査(Semes LP, 1995)によると、光くしゃみ反射を有する人の67%は女性、94%は白人で、鼻中隔湾曲を伴うことが多かったと言います。どのようなメカニズムで光がくしゃみを引き起こすのかに関してはわかっておらず、そもそも猫においてこの現象があるのかどうかすら分かっていないというのが現状です。窓際で日向ぼっこしているときに意味もなく猫がくしゃみを頻発する場合は、ひょっとするとこの「光くしゃみ反射」なのかもしれませんね。

胃くしゃみ反射

 胃くしゃみ反射とは、胃袋が満杯になったタイミングでなぜかくしゃみが誘発されるという現象のことです。「Sneeze」(くしゃみ)と「Satiation」(満腹)を合わせて「Snatiation」(スネイシエイション)などとも呼ばれます(A S Teebi, 1989)。
 なぜこのような現象が起こるのかに関しては全くわかっていませんが、常染色体優性遺伝する体質の一種ではないかと推測されています。この体質を持っている人は満腹時にくしゃみが出ますので、腹圧に押されて吐き戻さないよう注意しないといけないでしょう。なお猫において同様の反射があるかどうかはわかっていません。

興奮くしゃみ反射

 興奮くしゃみ反射とは性的な興奮に伴ってくしゃみが引き起こされるという奇妙な現象のことです。人によっては空想しただけでくしゃみが出ます。猫において同様の反射があるかどうかはわかっていません。

心因性くしゃみ反射

 心因性くしゃみ反射とは心理的な要因によってくしゃみが引き起こされることです。特徴はくしゃみが止まらないことで、睡眠時以外はずっとクシュンクシュンとくしゃみを出し続けます。原因はよくわかっていませんが、心理セラピーによって改善することから何らかのストレスが原因になっているのではないかと推測されています。人間では思春期の女の子で見られますが、猫において同様の現象があるかどうかはわかっていません。常識的に考えると無いでしょう。

猫のくしゃみを減らす方法

 猫のくしゃみの原因がわかったら、減らす方法についても考えてみましょう。

アレルギーを減らす

 猫のくしゃみがアレルギー性鼻炎によって引き起こされている場合、アレルギー反応を引き起こすアレルゲンを減らす必要があります。以下は季節ごとに見られる代表的なアレルゲンの一覧です。家の中からできるだけ取り除くように努めましょう。 出典:ジェネラリストのための小動物皮膚科診療(学窓社, P108) 腫瘍アレルゲンの季節別増減  人間、サル、犬においてはスギ(Cryptomeria japonica)の花粉に対するアレルギーが確認されており、一般的に「花粉症」と呼ばれています。主な症状は季節性の鼻炎と結膜炎などです。2001年、東京大学大学院のチームが行った症例報告(Masuda, 2001)により、どうやら猫にも上記「花粉症」らしきものがあることが確かめられました。
 報告によると、大学付属の獣医療センターを受診した短毛のメス猫(4歳/避妊済み)は1歳の頃から季節性の鼻炎を発症するようになったと言います。医療チームが26種のアレルゲンに対する反応テストを行った所、唯一「スギ花粉」にだけ陽性反応を示したとのこと。こうした結果から猫にもスギ花粉に対するアレルギーがあり、IgE特異抗原を介したI型アレルギーではないかと推測されています。 猫にも人間や犬と同じようにスギ花粉による花粉症がある  人間にとっても厄介な花粉症ですが、どうやら猫にも無関係ではないようです。屋内への花粉の侵入を防ぐためには、洗濯物を部屋干しするとかHEPAフィルター付きの空気清浄機をかけるといった準備が必要になるでしょう。また猫の外出を許していると、好きなだけ花粉と接触してしまいます。猫の健康と安全を守るためにも完全室内飼いに切り替えましょう。 猫が喜ぶ部屋の作り方

感染症を減らす

 猫のくしゃみが感染性鼻炎によって引き起こされている場合、感染症を引き起こす細菌やウイルスとの接触をできるだけ少なくする必要があります。冒頭でも述べましたが、以下は咳やくしゃみと行った呼吸器症状を引き起こす代表的な疾患の一覧です。
くしゃみから考えられる病気
 まず、そもそも感染しないようにするためには猫を完全室内飼いにし、不特定多数の外猫と接触できないようにする必要があります。次に、万が一感染しても症状が重くならないよう、あらかじめワクチン接種をしておく必要があります。そして同居猫がいる場合、病原体が咳やくしゃみを通じてうつってしまわないよう一時的に隔離する必要があります。 猫のワクチン接種 猫の感染症を予防するためには完全室内飼いとワクチン接種が必須  カゼを始めとする呼吸器系の病気は咳やくしゃみなどを通じてうつってしまうことが多々あります。では人間のカゼ(インフルエンザ)が猫に移ったり、猫のカゼが人間にうつるということはあるのでしょうか?結論から言うと「ありえます」。
 2017年、アメリカ・オハイオ州立大学を中心としたチームは400頭の猫を対象とし、「新型ヒトインフルエンザウイルスH1N1」「季節性ヒトインフルエンザウイルH1N1」「季節性ヒトインフルエンザウイルスH3N2」の3種に関する感染率調査を行いました。2009年9月~2010年9月と2011年6月~2012年8月という2つの時期に分けて調査したところ、以下のような結果になったと言います。 猫はヒトインフルエンザに感染して媒介するかもしれない 猫におけるヒトインフルエンザ感染率の変遷(2009~2012年) 上で示したような結果から調査チームは、感染者からいったん猫にウイルスが移り、その猫を媒介して別の人間にウイルスが移る可能性を否定できないとの結論に至りました。「猫が3回くしゃみをすると家族全員が風邪をひく」というヨーロッパの言い伝えにもそれなりの根拠があるのかもしれませんね。幸いなのは、ヒトインフルエンザウイルスが猫に感染したとしても重篤な症状を引き起こすことはないという点です。

鼻への刺激を減らす

 猫のくしゃみが鼻腔内への刺激によって引き起こされている場合、屋外や室内から刺激物をできるだけ取り除く必要があります。以下は室内でよく見られる揮発性有機物質(VOC)の一覧です。目に見えないから軽く見られがちですが、猫の咳やくしゃみが止まらない原因は、こうした小さな物質が空気中に漂っているからかもしれません。 室内における揮発性有機物質(VOC)  微小粒子状物質(PM)のうち粒子径が2.5μm以下のものは一般的に「PM2.5」と呼ばれており、人間の健康に対する悪影響が懸念されています。しかしPM2.5の影響は人間のみならず、犬や猫といったペット動物にまで及んでいるようです。
 2018年、国立台湾大学動物病院のチームは家庭環境中における室内空気汚染と呼吸器系の疾患との間に何らかの関係性があるかどうかを確かめるため、猫81頭(呼吸器疾患64頭+比較対象17頭)を対象とした比較調査を行いました。その結果、「平均PM2.5が高い」ことと「PM2.5が基準値以上」という項目が呼吸器系疾患の発症リスクになっていることが明らかになったといいます。具体的には、PM2.5が健康基準である35μg/m3超のとき、呼吸器疾患を発症するリスクが4.13倍に高まるというものでした。
 家庭内においてもPM2.5の発生源になりうる物質がたくさんありますので、なるべく少なくするよう心がけておいたほうがよいでしょう。 PM2.5が高濃度の家庭においては猫の呼吸器疾患発症リスクが激増する
室内のPM2.5発生源
室内におけるPM2.5の発生源にはお線香やロウソクも含まれる
  • タバコ
  • 調理煙
  • ストーブ
  • お線香・ロウソク
  • 塗料
  • 接着剤
  • 殺虫剤
  • 難燃剤
  • 消臭剤

異物の混入を防ぐ

 猫のくしゃみが鼻腔内への異物によって引き起こされている場合、鼻の穴におかしな物が入ってしまわないよう注意する必要があります。
 人間の鼻に比べて猫の鼻はかなり小さいため、鼻の穴に入り込むものは限られてきます。例えば人間でよく見られるボタン電池、ナッツ、豆、コインといったものはそもそも猫の鼻の穴には入らないでしょう。そのかわり、猫の小さな鼻孔にも侵入できるコバエ、アリ、ウジ(ハエの幼虫)、回虫などには注意が必要です。珍しい例ではヒツジバエの幼虫が侵入したという症例報告もあります。 猫の鼻腔内に侵入したヒツジバエの幼虫  オーストラリアの農家に飼われている8歳のバーミーズが、ヒツジの放牧場から家に戻って数時間たった頃から突然の呼吸困難、痰が絡んだような咳、激しいくしゃみなどの症状を示し始めました。動物病院で鼻の検査を行った所、炎症を起こして腫れた鼻粘膜に白い何かが動いている様子が確認されました。鼻洗浄によって外に出てきたのはヒツジバエ(Oestrus ovis)の幼虫(ウジ)だったそうです。
 こうしたゾッとするような気持ち悪い症例は外を出歩くことでリスクが高まりますので、完全室内飼いに切り替えることが望まれます。 猫が喜ぶ部屋の作り方

くしゃみはどのように出る?

 鼻の中に加えられた刺激は、そこに分布している三叉神経(さんさしんけい)の枝を通じて脳内のくしゃみ中枢に送られます。刺激を受け取ったくしゃみ中枢は「くしゃみを出せ!」という指令を各所に出し、実際のくしゃみが引き起こされます。

鼻の刺激を脳に送る

 鼻腔内の刺激を脳に送り届けるのは三叉神経(さんさしんけい=第5脳神経)です。具体的には眼神経の枝である前篩骨神経、上顎神経の枝である眼窩下神経が関わっています。
 人間の慢性鼻炎患者に対して行われる「後鼻神経切断術」は、鼻の中に分布している神経を部分的にチョキンと切ることにより、刺激が脳に伝わらなくするという手術です。

刺激を脳で受け取る

 鼻の中で受け取った刺激は神経を通じて脳に送られます。脳の中でくしゃみを引き起こす部位を「くしゃみ中枢」と呼びますが、これは便宜上の呼び方であり、具体的にどの部位が関わっているのかに関しては人間においてすら完全にはわかっていません。
 脳幹下部へ電気刺激を加えると、鼻腔粘膜に機械的な刺激を加えた時と同じようにくしゃみが誘発されることから、脳幹がくしゃみの発生に関わっていることは間違いないようです。この仮説は延髄外側症候群(ワレンベルク症候群)を発症した人においてくしゃみができなくなることからも部分的に証明されています。

筋肉に指令を出す

 脳からのくしゃみ司令を受けた筋肉はそれぞれの持ち場で収縮してくしゃみを作り出します。具体的には以下のような筋肉が関わっています。
くしゃみを作り出す筋肉群
  • 息を吸い込むとき横隔膜と肋間筋が収縮することで胸腔の体積を広げ、息を肺の中に吸い込みます。声門を締めた状態で腹直筋を収縮させ、肺の空気を圧縮します。
  • 息を吐き出すとき軟口蓋と口蓋垂が下がると同時に舌の後部が上がり、口へ流入する空気の量を減らします。この時茎突舌筋と呼ばれる小さな筋肉も収縮し鼻腔に流れる空気の量を増やします。圧縮した空気を一気に吐き出すと同時に首を横に回転させて遠心力を生み出し、鼻の中に溜まっているものを外に放り出します。また尿もれを防ぐため外尿道括約筋が収縮して尿道を締めます。
 人間では頭を前後に振ることで遠心力を作り出しますが、猫では頭をグルンと回すことによって遠心力を作り出します。抱っこしているときに猫がくしゃみをすると飼い主の顔がべちゃべちゃになってしまうのは、遠心力で飛ばされたツバやよだれが周囲に飛び散るためです。 人間は頭を前後に振って、猫は左右に振ってくしゃみをする  茎突舌筋(けいとつぜっきん)の収縮は咳をしているときには見られませんので、舌を上げることで鼻に流れ込む空気の量を多くしているものと考えられます。また力んだ拍子におしっこが漏れてしまわないよう、ちゃんと外尿道括約筋が収縮して尿もれを防いでいるというのも感心ですね。
猫のくしゃみ
 以下でご紹介するのは、猫がくしゃみをする瞬間をとらえた動画です。目にも留まらぬ速さで頭を回転させている様子が確認できます。 元動画は⇒こちら
 猫のくしゃみ・スローモーション。 元動画は⇒こちら

くしゃみの速度は?

 一昔前まで「くしゃみは新幹線と同じ時速300km」と言われていました。しかしデジタルハイビジョンカメラを用いた最新の調査により、「時速300km」は単なる都市伝説で、実際はノロノロ運転のスクーターくらいのスピードして出ていないことが判明しています(Nishimura, 2013)。この調査ではくしゃみの速度はせいぜい秒速6m(時速21.6km)であり、0.2秒で口元から84cm地点まで達するもそこからは空気中に分散していくとのこと。 人間のくしゃみの速度はせいぜい時速20km程度  上記した調査は人間を対象としたものです。猫の体は人間よりも遥かに小さいため、くしゃみをするときの力に関しては弱いと考えられます。ただし鼻の穴が小さいため、指で挟んだホースのように勢いが増している可能性があります。ただどう考えても新幹線と同じ速度にはならないでしょう。

子猫もくしゃみができる?

 鼻の中に息を吹き込むと成猫においてはくしゃみを誘発することができます。しかし子猫の鼻を同じように鼻を刺激しても、大きく息を吐きだすだけでくしゃみが起こりません(Kamel Masmoudi, 1997)。こうした違いは脳(孤束)がまだ発達していないために生じるものと考えられています。子猫がちゃんとしたくしゃみができるようになるのは生後3週齢(生後20日くらい)以降です。 子猫は生後3週齢を過ぎるまでくしゃみ反射が出ないようにできている  生後3週までは、きょうだい猫たちがダンゴになってが母猫のおなかにしがみつき、お乳を飲んでいる時期です。この頃にくしゃみをしてしまうと、周囲にいるきょうだい猫にまで細菌やウイルスを撒き散らしてしまうため、あえてくしゃみができないようになっているのかもしれませんね。特に生まれたての子猫では猫ウイルス性鼻気管炎猫カリシウイルス感染症がやっかいです。

逆くしゃみとくしゃみの違い

 くしゃみと紛らわしいものとしては「逆くしゃみ」(Reverse Sneezing)というものがあります。医学的には「咽頭絞扼反射」もしくは「発作性呼吸」などとも呼ばれます。特徴は息を吐き出すときではなく、逆に吸い込むときに鼻の奥から「グーグー」という音が出る点です。
猫の逆くしゃみ
 以下でご紹介するのは、猫が「逆くしゃみ」をするときの動画です。息を吸い込み、肋骨が膨らむのと同時に、軟口蓋付近から大きな音を出しています。通常、特別な治療は必要なく、自然に収まります。 元動画は⇒こちら
 猫が逆くしゃみをする理由は定かではありませんが、鼻の奥や軟口蓋に生じた違和感を取り除こうとしているのではないかと考えられます。人間で言うとちょうど「鼻をすする」感じに近いかもしれません。
 鼻炎の症状の一つに「後鼻漏」(こうびろう)というものがあります。これは鼻腔で生じた鼻水が前ではなく後ろの方に流れてしまった状態のことで、下の図で言うと鼻腔から咽頭の鼻部に流れ込んでしまったような感じです。 猫の鼻腔の断面図  人間の場合、ズズーと鼻をすすって口から吐き出しますが、猫で後鼻漏が起こったときはどうするのでしょうか?
 猫は人間のようにつばを吐くことができませんので、「逆くしゃみ」によって鼻腔の奥や咽頭にたまった異物を吸い込んだ後はそのまま飲み込むしかありません。よくよく観察してみると、確かに逆くしゃみの直後にゴクリと何かを飲み込む仕草を確認することができます。対応関係を示すと以下のようになるでしょう。
鼻腔の違和感を解消する方法
  • 人間の場合鼻をすする→異物を舌の上に落とす→ツバとして吐き出す
  • 猫の場合逆くしゃみ→異物を舌の上に落とす→そのまま飲み込む
 逆くしゃみは人間で言う「鼻すすり」に近い行動であり、勝手に収まりますのでとりわけ心配する必要はありません。ただしなかなか収まらない場合は鼻の奥や咽頭に何らかの異物が挟まっている可能性もあります。その時は動物病院に行って鼻の中を検査してもらいましょう。