猫アレルギーについて~猫を飼う前に症状・原因・対処法・治療法を知る
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猫アレルギーについて

 猫アレルギーとは、猫と接触することによってアレルギー反応が引き起こされ、くしゃみ、鼻水、咳など、風邪とよく似た症状を発症することです。体が慣れてアレルギー反応が自然治癒するということは基本的にありませんので、猫を家に迎え入れ、向こう10年近く同居しようとしている人は、自分や家族に猫アレルギーがないことをあらかじめ確認することが必要となります。

猫アレルギーの症状

 猫アレルギーの症状は、主としてヒスタミンと呼ばれる体内の化学物質によって引き起こされるもので、風邪の症状とよく似ています。

猫アレルギーの典型的な症状

 猫アレルギーの典型的な症状は以下です。猫と接することによりアレルギー物質が体内に入り、アレルギー反応が引き起こされることで発症します。
猫アレルギーの症状
  • 目のアレルギー症状かゆみ・充血・涙・腫れ
  • 鼻のアレルギー症状かゆみ・鼻水・くしゃみ・鼻づまり
  • のどのアレルギー症状痛み・咳・喘鳴(ぜんめい=ぜーぜーいうこと)
  • 皮膚のアレルギー症状発赤(ほっせき)・かゆみ
  • その他のアレルギー症状胸を締め付ける感覚・唇の荒れ・喘息のような咳き込み・花粉症様症状

猫アレルギーで死亡することはある?

 猫アレルギーによる症状で死亡してしまうことはあるのでしょうか?結論から言うとありえます。
 西洋には古くから「猫が赤ん坊の息を吸い取る」という迷信があります。この表現の出どころは不明ですが、猫アレルギーによって喘息症状が引き起こされ、呼吸困難に陥った人の様子を表している可能性を否定できません。昔の人は「アレルギー」とか「喘息」といった概念がありませんので、ファンタジーを交えて「猫が人間の息を盗んだ!」としたのかもしれませんね。猫が赤ん坊の息を盗む? 猫が赤ん坊の息を吸い取るという迷信の元は猫アレルギー?  迷信ではなく実データを挙げると2007年、アメリカの「NIEHS」(国立環境衛生科学研究所)を中心としたチームは、国内に暮らす様々な人種(6歳~59歳)に対し、主要なアレルゲン10種のスキンテストを行い、アトピーの有無を検査しました。その結果、喘息患者のうち56.3%は何らかのアレルギーを抱えていることが明らかになったといいます。さらにアレルゲンのうち最も多かったのは「猫」で29.3%を占めていたとも(→出典)。
 一方、「CDC」(アメリカ疾病管理予防センター)の統計によると、2001年から2009年における喘息による死亡率は、国民1000人当たり0.14~0.21人程度(0.014~0.021%)と推計されています(→出典)。
 「NIEHS」と「CDC」のデータを合体させると、「喘息患者1万人のうち年間1~2人が死亡し、そのうちおよそ3割は猫が原因」ということになります。これはかなり強引な推計ですが、猫アレルギーが原因で死亡してしまうことはあるかという問いに対しては、「可能性を否定できない」と答えざるを得ません。
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猫アレルギーの検査

 毎年数万頭の猫が殺処分されていますが、そのうち10%以上が飼い主による持ち込み、すなわち飼育放棄によるものと推計されています。飼育を放棄する理由は様々ですが、飼ったはいいが、自分や家族にアレルギー症状が出てしまったというパターンがあるのが現実です。ですから安易に猫を迎える前に、自分や家族にアレルギーがあるかどうかは必ず確認しておきたいものですね。
 アレルギーがあるかどうかを調べる検査方法には、病院内で行う「血液検査」と「生体検査」、および自分自身で行う「接触テスト」があります。

アレルギーの血液検査

 血液検査とは、ごく微量の血液を採取し、血液中に存在する特異的なIgE(異物を排除しようとするタンパク質の一種)の存在をさまざまな方法で検出する検査法です。血中に含まれるIgE抗体が多ければ多いほどアレルギーの疑いが強いと判断されます。検査法によって保険が適用されるものとされないものがありますので、費用を含めた詳細は皮膚科やアレルギー科に直接お問い合わせください。
血液検査の特徴
  • メリット少量の血液を採取するだけなので体への負担が小さい | 抗ヒスタミン剤など検査結果に影響を及ぼすような投薬を中断しなくてよい
  • デメリット結果が出るまでに1日~数日かかる | 検査方法によって結果がまちまち | 費用が比較的高い

RAST

 「RAST」(IgE-RAST)とは血液中に存在する特異的なIgEを放射性アレルゲン吸着法という技術で調べる検査方法です。IgE抗体がどの程度含まれるかによって0(0.35kUA/L未満)~6(100kUA/L超)までの7段階で評価されます。1970年代にスウェーデンで開発された技術ですが、近年はより正確な検査法に取って代わられつつあります(→出典)。

ImmunoCAP Specific IgE

 「ImmunoCAP Specific IgE」は血液中に存在する特異的なIgEを蛍光酵素免疫測定法という技術で調べる検査方法です。この検査ではIgE抗体を0~100kUA/Lの範囲で検出することができ、ある特定のアレルゲンに対するアレルギーを持っている人を84~95%の確率で、逆に持っていない人を85~94%の確率で見分けることができるとされています。600種類を超えるアレルゲンに関する検査が可能で、猫のフケも含まれています(→出典)。

MAST Ⅳ

 「MAST Ⅳ」は代表的なアレルゲン36種に対する特異的IgEを化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)という技術で検出する検査法です。この検査には食品アレルゲン20種、花粉アレルゲン8種、環境アレルゲン4種、その他のアレルゲン4種が含まれていますが、猫のフケ(ネコ皮屑)が「環境アレルゲン」としてカウントされていますので、猫アレルギーの有無を調べるときに有用でしょう。アレルギーの度合いは「陰性」、「疑陽性」、「陽性」の3段階で評価されます(→出典)。

アラスタット3g*

 「アラスタット3g*」は血液中に存在する特異的なIgEをCLEIA法という技術で調べる検査方法です。IgE抗体がどの程度含まれるかによって0(0.35kUA/L未満)~6(100kUA/L超)までの7段階で評価されますが、検出技術の向上から今まで「アレルギーなし」にくくられていた0.10~ 0.34kUA/Lが「微弱陽性」(アレルギーの可能性を完全には否定できない)と呼ばれるようになっています。猫のフケに対する検査も可能です(→出典)。

Viewアレルギー39

 「Viewアレルギー39」は血液中に存在する特異的なIgEをFEIA法という技術で調べる検査方法です。IgE濃度により0(0.27未満)~6(29.31以上)の7段階に評価されます。猫のフケに対する検査も可能です(→出典)。

生体検査

 生体検査とは、皮膚にアレルゲンを直接接触させることでアレルギー反応を見る検査法のことです。一般的には保険が適用されますので、費用を含めた詳細は皮膚科やアレルギー科にお問い合わせください。
生体検査の特徴
  • メリット結果が数十分で出る | 費用が比較的安い
  • デメリットテストの結果に影響を及ぼす可能性がある投薬治療を中断する必要がある | 湿疹などの皮膚病変がひどい人ではできない | 炎症箇所が数日残ることがある | アナフィラキシーショックの危険性がゼロではない

プリックテスト

 プリックテストとは、皮膚に表面に小さな傷を付けてアレルゲンと接触させ、アレルギー反応が出るかどうかを見る検査法のことです。
 やり方はまず前腕の内側や背中など、体毛が少ない場所にアレルゲンを薄めた溶液を垂らします。通常は複数のアレルゲンに対する反応を一度に検査しますので、体の表面に番号を振ってどの番号がどのアレルゲンに対応しているのかを決めておきます。 アレルゲン溶液を前腕の内側に  次にプリック針と呼ばれる特殊な針を用いて皮膚の上にごく小さな傷を付け、アレルゲン溶液を皮下に吸収させます。 溶液の直下にプリック針で微小な傷をつける  即時性アレルギー(I型アレルギー)の場合、反応はすぐに出ますので15分~30分待った後、針で傷を付けた場所を確認します。 アレルゲンが反応を引き起こしたかどうかを炎症の度合いで判定  アレルギー反応が出た場合、炎症反応が起こって皮膚の赤み、腫れ、かゆみが観察されます。この赤みができた場所(紅斑)や腫れが出た場所(膨隆疹)の直径を測り、基準(通常は5mm)よりも大きければアレルギー陽性、小さければアレルギー陰性として判断していきます。なおプリックテストで陰性とでた場合でも、プリック針で5mm程度の線状の傷をつけて反応を再度確認することがあります。こちらは「プリックテスト」(prick=刺す)に対して「スクラッチテスト」(scratch=引っかく)と呼ばれます。

皮内テスト

 皮内テストとは、皮膚の内部に注射針で直接アレルゲンを注入する検査法のことです。激しいアレルギー反応である「アナフィラキシー」を誘発することがあるため、行う際は救急キットと人員を用意しておかなければなりません。 アレルギーの皮内テストではアレルゲンを直接皮下に注入する  やり方は、ごく微量(0.02 ml)のアレルゲン液と比較対照液(生理食塩水)を前腕内側の皮膚に注射します。その状態で15分ほど待ち、赤みができた場所(紅斑)や腫れが出た場所(膨隆疹)の直径を測り、基準値と比較します。危険を伴うわりに精度が低いことなどから、優先的に行われる検査法ではありません。

接触テスト

 接触テストとは、猫と実際に触れ合うことでアレルギー反応が出るかどうかを確かめることです。
 アレルギーの「血液検査」にしても「生体検査」にしても、ほとんどが「猫のフケ」(皮屑)をアレルゲンとして用いており、アレルゲンの一部(Fel d 1/Fel d 2/Fel d 4)に対する反応はある程度わかるかもものの、残りのアレルゲン(Fel d 3やFel d 5など)に対してどのように反応するかまではわかりません。またアレルギー検査の精度は100%というわけではないため、「病院では猫アレルギー陰性といわれたのに、実際に猫と暮らし始めたらなぜかアレルギー症状が出た!」という事態も起こりえます。こうした事態を避けるためには、暮らし始める前の段階で実際に猫とふんだんに接しておく必要があります。事前に猫と触れ合うことでアレルギー反応が出るかどうかを確認  どの程度テストすればアレルギーの有無を判断できるのかに基準はありません。しかし数ヶ月かけて最低でも10回以上試験的に猫と触れ合っておくことをおすすめします。猫カフェなどを利用すれば、いろいろな体質の猫と同時に接触することができるので、反応がでやすいかもしれません。しかしアレルギー反応が猫によるものなのか、それとも店内のハウスダストやダニによるものなのかまではわからないというデメリットもあります。全国の猫カフェ一覧
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猫アレルギーの原因

 アレルギーとはそもそも、体内に入ってきた異物を免疫系が排除しようとする際、頑張りすぎて逆に体調を悪化させてしまうことです。アレルギーを引き起こす外界からの異物を、特に抗原(こうげん, アレルゲン)といいます。猫アレルギーを示す人とそうでない人がいますが、この現象を一言で表すと「体質」です。ある人にとっては猫の発するアレルゲンは異物になりますが、他の人にとってはまったく問題ない、という免疫系の認識に個人差があるのです。

猫が発するアレルゲン

 猫アレルギーのアレルゲンとしては、現在8種類が知られています。アレルゲンは極めて小さく、花粉やほこりの10分の1程度の大きさしかありません。その小ささゆえに様々な場所に飛び散りやすく、一説では猫を飼っていない家の1/3で、なぜか猫由来のアレルゲンが発見されたり、猫が生息していないはずの南極大陸でも発見されたそうです。以下は代表的な猫アレルゲンです(→出典)。
猫アレルギーを引き起こすアレルゲン
  • Fel d 1 「Fel d 1」は「セクレトグロビン」(secretoglobin)から構成されており、猫アレルギー患者のおよそ90%はこのアレルゲンに反応を示すとされています。またFel d 1に反応するの中には、ライオンやトラといった大型ネコ科動物にも反応してしまう人がいます。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
  • Fel d 2 「Fel d 2」は「アルブミン」(albumin)から構成されており、猫アレルギー患者の22%がこのアレルゲンに対するIgE抗体を保有していたというデータがあります。構造が豚肉に含まれる血清アルブミンに酷似していることから、極めてまれではありますが、猫アレルギーを発症した後に豚肉を食べた人が、突如アレルギー反応を示すことがあります(ブタ-ネコ症候群, Pork-cat syndrome)。
  • Fel d 3 「Fel d 3」は「シスタチン」(cystatin)から構成されており、猫アレルギー患者の60~90%がこのアレルゲンに対するIgE抗体を保有していたというデータがあります。シスタチンは、タンパク質加水分解酵素のうち、中心部分にシステインという物質を含むものを阻害する役割を担っています。
  • Fel d 4 「Fel d 4」は「リポカリン」(lipocalin)から構成されており、主として猫の唾液中に含まれます。このアレルゲンに反応を示す人は、ウマのもつ「Equ c 1」、マウスの持つ「MUP1」、ラットの持つ「Rat n 1」、そしてイヌの持つ「Can f 2」というアレルゲンに対しても反応を示すと言われています。動物アレルギー患者109人中68人(62%)において、犬と猫両方に対するIgE抗体が検出されたというデータもあります。
  • Fel d 5 「Fel d 5」は「IgA」と呼ばれる免疫グロブリンの一種から構成されており、主として猫の唾液中に含まれています。猫アレルギー患者の38%がこのアレルゲンに対するIgE抗体を保有していたというデータがあります。
  • Fel d 6 「Fel d 6」は「IgM」と呼ばれる免疫グロブリンの一種から構成されています。「Fel d 5」同様、猫アレルギー患者の38%がこのアレルゲンに対するIgE抗体を保有していたというデータがあります。
  • Fel d 7 「Fel d 7」は2011年に発見された新しいアレルゲンで、猫の舌にある「フォン・エブネル腺」(Von Ebner's gland)と呼ばれる器官から分泌される「リポカリン」(lipocalin)によって構成されています。犬のアレルゲンである「Can f 1」と構造が似ていることから、「Fel d 7」に反応する人の多くは、犬のフケなどにも反応します。
  • Fel d 8 「Fel d 8」は2011年に発見された新しいアレルゲンで、「ラセリン」(latherin)に似た物質から構成されています。ウマの汗や唾液に含まれる「Equ c 5」というアレルゲンに構造が似ていることから、「Fel d 8」に反応する人の中には、ウマに対してアレルギー反応を示す人もいます。

猫アレルギーの主犯格

 上で列挙した中でも、猫の脂腺から分泌されるFel d 1と呼ばれる糖タンパク、および唾液中に含まれるFel d 4が猫アレルギーを引き起こす主犯格と言われています(→出典)。
 Fel d 1は猫の皮膚中に存在する脂腺(しせん)、肛門腺、唾液腺から分泌されるアレルゲンです。平均すると1匹の猫は67ミリグラムのFel d 1を保有しており、特に首や顔周辺の毛に多いとされます。一方Fel d 4は主として顎下腺(がくかせん=あごの下にあり、唾液を分泌する組織)から放出され、毛づくろいするときに毛やフケに付着することで空気中に飛び散ります。研究によると、猫アレルギーを示す人の63%は、このFel d 4に対してIgE抗体を持つとか。 アレルゲン「Fel d 1」の分子構造

猫アレルギーでも飼える猫?

 猫の品種はメジャーなもので40種類以上、マイナーなものまで含めると100種類以上います。こうした品種の中には、アレルギーを出しにくい「ハイポアレジェニック・キャット」(Hypoallergenic Cat)という評判を持ったものが幾つかあり、「猫アレルギーでも飼える(飼いやすい)猫」として宣伝されることもあります。具体的にはサイベリアンバリニーズベンガルコーニッシュレックスなど12~13種です。
 しかしこうした猫たちに共通しているのは「アレルゲンの産生量が少ない」、もしくは「抜け毛が少ない」ということであり「アレルゲンを全く産生しない」ということではありません。ですから「アレルギーが出にくい」とか「アレルゲンが少ない」と言われて猫を購入したにもかかわらず、結局アレルギーが出てしまうという危険性は常にあるわけです。「アレルゲンを持たない猫はいない」という事実は常に念頭に置いておく必要があるでしょう。
 過去にアメリカでは、「Allerca」や「FelixPets」といった会社が、「Fel d 1」を作り出さない猫を商業的に作出しようとしました。しかし「Fel d 1」が猫に対してどのような役割を担っているかが分かっていない限り、猫の体質を人間の都合で大幅に操作することには倫理的な問題があります。
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猫アレルギーの予防・対処法

 猫アレルギーを引き起こすアレルゲンは極めて小さいため、ひとたび空気中に舞い散ると数ヶ月から数年もの間、部屋の中にとどまることも珍しくありません。

猫との生活環境を整える

 猫アレルギーを予防する方法は、アレルゲンとの接触を最小限にとどめるという一言に尽きます。具体的な生活環境の整え方は以下です。
アレルゲンの低減方法
  • HEPAフィルターを用いる 掃除機や空気清浄機にはHEPAフィルターを用いるようにします。HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)とは、空気中からゴミ、塵埃などを取り除き、清浄空気にする目的で使用するエアフィルタの一種です。JIS Z 8122 によって、「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ」と規定されています。1998年の調査では、大きさが0.47μm以下の微粒子は部屋の中に2週間以上とどまるといいます(→出典)。通常のフィルターではこの大きさの微粒子を通してしまう危険性があるため、空気清浄機を稼働する場合はHEPAフィルターとワンセットにした方がよいでしょう。
  • プラズマクラスターを用いる(?) 2016年に行われた調査では、家電メーカー「シャープ」が開発した「プラズマクラスター™」という技術には、空気中を漂うアレルゲンのタンパク質構造を変化させ、血中IgE抗体と結合する割合を7~8割も低下させる能力がある可能性が示されました(→詳細)。まだ実験室レベルの話ですが、今後アレルギー患者と健常者を対象とした比較調査が進めば、プラズマクラスターが持つ抗アレルギー効果が実証されていくかもしれません。当機能を搭載した空気清浄機はすでに市販されていますが、ややうるさいのが難点です。
  • アレルゲンの温床を絶つアレルゲンの温床として見過ごせないのが、子供用の布製ぬいぐるみ  アレルゲンの温床としては敷物・布団・マットレス・枕・カーテン・シーツなどがあります。こうしたものは定期的に洗ったり、交換したほうがよいでしょう。また意外とあなどれないのが布製のぬいぐるみです。2014年の調査では、マットレスから80%の確率でアレルゲンが見つかったのに対し、ぬいぐるみからは87.5%の確率で発見されたといいます(→出典)。またイエダニ由来のアレルゲンに関しては、マットレスの3倍近くを含んでいたとも。このようにぬいぐるみは、猫由来の「Fel d 1」のみならず、その他様々な種類のアレルゲンを高濃度で含んでいる可能性があります。
  • アレルゲンを吸着しやすいウール系の衣類を控える ウール系の衣類は目が細かいため、アレルゲンが吸着しやすく、また一度吸着したら取り除きにくい傾向があります。
  • カーペットをやめる 目の細かいカーペットの代わりに、表面がツルっとしたビニール製カーペットやフローリングに替えることも、アレルゲンの軽減に役立ちます。ただし猫が足を痛めないよう、フローリングには滑り止め加工をしてください。
  • 猫に触った後の手洗いを忘れない 猫は自分ではグルーミングできない首や顎の下をなでられることも好みます。しかしこうした部位にはアレルゲンが豊富に含まれているため、そこをなでた手には多くのアレルゲンが付着してしまいます。猫を触った後、しっかりと手を洗うことが重要です。
  • 猫の立ち入り禁止区画を作る アレルゲンが飛びちらないよう、猫専用の区画を作ることも効果的です。ただし猫にストレスを与えてしまわないよう、十分な広さと定期的な接触は欠かせません。
  • 他のアレルゲンを可能な限り除去する 複数のアレルゲンは症状を悪化させるため、花粉やダニなど、猫アレルギー以外のアレルギー症状が出ないよう注意します。猫を放し飼いにすれば、部屋の中に飛び散る猫由来のアレルゲンを減らせるのは事実ですが、他のアレルゲン(花粉・ダニなど)を持ち込む可能性がありますのでお勧めできません。
  • オス猫を去勢する アレルゲンの産生量に性差があるかどうかを調べた1994年の研究によると、メス猫よりもオス猫の方がたくさんのFel d 1を作ることがわかっています(→出典)。研究者は男性ホルモンであるテストステロンが何らかの関わりを持っていると推測していますが、明確なメカニズムはよくわかっていません。オス猫を去勢してテストステロンの分泌量を減らし、体内環境をメス猫に近づければ、アレルゲンの産生能力が低下する可能性があります。
  • 頻繁なブラッシングで抜け毛を減らす アレルゲンの付着した抜け毛との接触機会を減らすことができれば、それだけアレルギー反応の発現も減らすことができます。詳細は当セクション直下の猫の抜け毛対策で解説しました。
  • 週に2回、猫のシャンプーを行う 一部の研究により、猫にシャンプーをするとアレルゲンを大幅に減らすことができると確認されています。詳細は当セクション直下の猫をシャンプーするで解説しました。

猫の抜け毛対策

抜け毛を減らせれば猫アレルギーも軽減できる  数ある猫アレルギー予防法の中でも、大きな効果を期待できるのが「抜け毛対策」です。猫の毛自体がアレルギーを引き起こすわけではありませんが、アレルゲンの付着した毛との接触機会を減らすことができれば、アレルギーが出る頻度を減らしたり、アレルギー反応の程度を軽くすることができることは確かです。以下で一般的な方法をご紹介します。なお猫に衣服を着せることや、極端に被毛を刈り込んでしまうことは、ストレスの原因になると考えられるためお勧めできません。
猫の抜け毛を減らすには?
  • 毛が抜け落ちる前に取り除く 掃除の手間を省くため、猫の毛が環境内に抜け落ちる前に取り除いてしまうという方法があります。最も一般的なのかブラッシングです。死毛だけを取り除いてくれるスリッカーブラシや「ファーミネーター®」、「フーリー®」のようなアイテムがあったり、掃除機と連結した「ペットグルーミングツール®」のような商品も売られています。またもし猫が嫌がらないなら体に直接コロコロをかけるという方法も有効でしょう。
  • 落ちた毛を取り除く 環境内に抜け落ちてしまった毛を取り除くこともまた重要です。一番簡便なのはこまめにコロコロ(カーペットの場合)やワイパー(フローリングの場合)をかけることでしょう。また最近はペットの抜け毛専用の「サイクロンクリーナー®」なども売られています。
  • 衣服に付いた毛を取り除く 環境内のみならず飼い主の衣服にも猫の毛はよく付着します。部屋着に関しては、抜け毛が目立つように猫の毛色と反対色を選んだほうがよいでしょう(猫が白なら部屋着は黒など)。洗濯すれば衣服に付いた抜け毛の半分以上は取れますが、洗濯機の故障や目詰まりの原因になってしまう危険性もありますので、事前にある程度コロコロを掛けておいた方が無難です。

猫をシャンプーする

シャンプーは猫アレルギー軽減に多少の効果はあるが、頻繁に行わないと意味がない  1997年に発表された研究によると、猫のシャンプーはアレルゲンの1つである「Fel d 1」の減少にある程度の効果があるようです(→出典)。
 実験によると、毎週1回の頻度で猫をシャンプー洗いしたところ、5週間後には空気中のアレルゲン量が44%減少し、また毎週1回の頻度で3分間猫を湯船に浸すと、1ヶ月で空気中のアレルゲン量が79%減少したそうです。しかしこうしたシャンプーの効果は長続きせず、空気中のアレルゲン量は1週間で元に戻るといいます。理由は、猫アレルギーの主犯格である「Fel d 1」は、約48時間で元のレベルに戻ってしまうからです。
 2000年に行われた調査では、猫の顔と胸元に含まれる「Fel d 1」の量が比較されました(→出典)。比較対象となったのは、皮膚1平方センチメートルに含まれる「Fel d 1」の量、及び被毛1グラムに含まれる「Fel d 1」の量です。結果は以下。なお、1ng(ナノグラム)は「10億分の1グラム」、1μg(マイクログラム)は「100万分の1グラム」を表します。
「Fel d 1」の部位別含有量
  • 顔の皮膚1015.2ng/cm2(±821.6ng)
  • 顔の被毛63.6μg/g(±34μg)
  • 胸元の皮膚115.2ng/cm2(±66.8ng)
  • 胸元の被毛29.6μg/g(±13.6μg)
 さらに、猫の皮膚を洗った後、顔の「Fel d 1」レベルは25.1ng/cm2(±25.7ng)、胸元のそれは22ng/cm2(±17.4)まで一旦は下がったものの、48時間後には再び元のレベルにまで戻ったとのこと。
 こうした事実から、アレルゲン「Fel d 1」は猫の顔面部に多く含まれており、仮に洗ったとしても2日くらいで元に戻ってしまうことが明らかとなりました。
 猫アレルギーだけれどもどうしても猫と同居したいという場合は、最低週1回(できれば週2回)のペースで定期的に猫を入浴させるという努力が必要なようです。しかし猫は本来水に濡れることを嫌う動物ですので、頻繁にシャンプーすることは、猫の福祉を損なうことにつながりかねません。念のため猫のシャンプーの仕方を以下でご紹介しますが、まず何よりも重要なのは、自分や家族が猫アレルギーかどうかは、事前に徹底的に調査しておくことです。 猫のシャンプーの仕方
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猫アレルギーの治療法

 現在、猫アレルギーの根本的なメカニズムは解明されていません。ですから必然的に、病院におけるアレルギー治療は「対症療法」、すなわち「今出ている症状を、アレルギー薬などで差し当たり軽減すること」が基本方針となります。

将来的な猫アレルギー治療

 現在、猫アレルギーの症状に対しては、抗ヒスタミン作用を持った飲み薬や点眼薬が用いられます。しかし将来的には猫アレルギーともっとうまく付き合っていく方法が生み出される可能性もあります。以下でご紹介するのはその一例です。

アレルギー新薬の開発

 2013年7月、ケンブリッジ大学のクレア・ブライアント教授は、「アレルゲンFel d 1とある特定のバクテリアが接触すると毒素が生成され、それがアレルギー反応を引き起こす」という事実を突き止めました(→出典)。また、毒素を認識する免疫系の要素も特定したとのこと。このように、これまでよく分かっていなかった猫アレルギー反応のメカニズムは、徐々に解明されつつあります。今後さらに研究が進めば、アレルギー反応をピンポイントで抑制するような薬が登場するかもしれません。

免疫療法

 海外では現在、「減感作療法」(げんかんさりょうほう)と呼ばれる免疫療法に関する研究が進んでいます。「減感作療法」とは、低濃度のアレルゲンにあえて触れさせることで、体を徐々に慣らしていく治療法のことです。具体的には「SIT」、「ALLERVAX CAT」、「T-cell reactive treatment」、「ILIT with MAT-Fel d 1」、「Peptide Vaccine」、「Cat-PAD」といった療法において、それぞれ調査効果が報告されています。また2016年には、猫の主要アレルゲン「Fel d 1」に含まれるエピトープ(抗体が認識する抗原の特定部分)の一部も特定されました(→詳細)。今後さらに研究が進めば、上記「減感作療法」が日本にも輸入され、「猫アレルギーの根治」と言う夢のような話が実現するかもしれません。

猫の飼育は毒か治療薬か?

 赤ちゃんの頃に猫と同居していると、猫アレルギーを発症しやすくなるのでしょうか?過去に行われた調査では、学童期に入る前の発症リスクを高めるというものや、逆に学童期以降から成人に対しては予防効果があるというものがあり、一致した見解には至っていません。しかし2017年にイギリスの調査チームが発表した報告により、猫アレルギーの発症リスクは年齢層によって大きく変わることが明らかになりました。その結果、矛盾した結論を述べている過去の調査結果のどちらか一方が間違っているわけではないことが判明したといいます。 Cat ownership, cat allergen exposure, and trajectories of sensitization and asthma throughout childhood
Healson Ihuoma et al., The Journal of Allergy and Clinical Immunology, dx.doi.org/10.1016/j.jaci.2017.09.030
生後1年間における猫の飼育は発症リスクの増加と低下の両方に関わっている  調査を行ったのはマンチェスター大学を中心とした共同チーム。1,004人の子供を対象とし、1→5→8→11→16歳のタイミングで猫アレルギーを発症しているかどうかをスキンプリックテスト(SPT)と血液検査(ImmunoCAP)によって長期的にモニタリングしました。その結果、1歳になるまでの期間に猫を飼っていた家庭においては、猫アレルギーの発症リスクが2.5倍(SPTベース)~3.1倍(血液検査ベース)に高まることが明らかになったといいます。ところが16歳時点における発症率を比較したところ、両グループ間の差は消え去り、むしろ飼育家庭の方がやや低い数値を見せました。さらに発症率グラフのカーブから数年後を予測したところ、1歳になるまで猫を飼っていた家庭の方が、成人期(20歳)における発症率が最終的には低くなる可能性が見えてきたそうです。 猫の飼育にかかわらず、16歳時点におけるSPT陽性率は同じ値に収束する 猫の飼育にかかわらず、16歳時点における血液検査(CRD)陽性率は同じ値に収束する  こうした結果から調査チームは、生後1歳までの猫の飼育が学童期前の猫アレルギーの発症リスクを高めることは間違いないが、生後20年間という長期的な視野を持つと、逆に発症リスクを低下させているとの結論に至りました。この結論は、過去の調査結果がお互いに矛盾して見える現象をうまく説明しているとのこと。
 赤ちゃんの頃に猫と同居していると、猫アレルギーを発症しやすくなるのかという問いはしばしば聞かれますが、現時点における最も妥当な答えは「幼少期においてはリスクだが青年期以降では予防効果がある」となるでしょう。
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