トップ猫の栄養と食事猫の食欲不振と増進

猫の正常な食欲とは?

 猫の正常な食欲とは、標準的な体型を維持するのに必要なだけの食欲です。猫の体型を示すBCSで言うと「BCS3」をキープできるだけの食事量(=食欲)がベストで、「BCS5」は食欲増進、「BCS1」は食欲不振となります。 猫の正常な食欲は標準体型を維持するだけ

猫の食欲を変える要因

 猫の場合、自分に必要な食事量が本能的にわかっており、放っておいても食べ過ぎや拒食に陥ることはありません。しかし一生を通じてずっと同じ食欲を保つ猫はおらず、以下のような項目が食欲レベルを上下動させます。

季節と食欲の変化

 猫の体内では、およそ4ヶ月周期で摂取カロリーの変動が起こり、それに伴って体重、エサの摂取量、甲状腺機能も周期的に変化するそうです(Houptら, 1980)。こうした体内リズムが原因で、一時的に食欲がなくなったり増えたように見えることもあるでしょう。また38頭の猫を対象とした最新の研究によると、食餌量は「春=普通」→「夏=小食」→「秋=普通」→「晩秋~冬=大食」というサイクルで変動するといいます(→Serisier, 2014)。理由としては、「運動量と必要エネルギー量が連動している」「日照時間」「外気温」「体内における消化率の変化」などが考えられますが、定かなことはわかっていません。 猫の食事量は、夏に最低となり、晩秋から冬にかけて最大となる  猫の食事量を日々記録してグラフにしておくと、上のグラフで示したように3~4ヶ月サイクルで上下動していることを確認できるかもしれません。食欲不振がグラフの「谷」(7月頃)の時期に当たっている場合は、しばらくすると「山」(11月頃)の時期に入り、自然回復する可能性があります。

老化・老衰と食欲の変化

 人間の場合、老化とともに必要エネルギーと食事量が減るというのが一般的な変化ですが、猫の場合どういうわけか10~12歳で必要栄養量が上昇し、12歳以降はさらに増えることがあるといいます。何の病気も抱えていない場合、老猫の食欲が増えるというのは正常の範囲内と言えるでしょう。ただしすべての猫で食欲の増進が見られるわけではなく、逆に不振に陥る猫もいます。老猫の摂取カロリー数に関し、成猫のマイナス20%~プラス15%と幅があるのはそのためです。 猫の老化・老衰

繁殖期と食欲の変化

 オス猫の場合、繁殖期に合わせて男性ホルモンの体内濃度が上昇して食欲が減るかもしれません。この現象を理解する際の好例は有袋類の一種「アンテキヌス」(Antechinus)です。ネズミに似たこの動物は1年のうちのごく限られた期間にだけ交尾行動が許されており、オスは体内のテストステロンを極限まで高めて自分の子孫を残そうとします。そして飲まず食わずでメスを追い求めた後は力尽きて死んでしまうそうです。オス猫はアンテキヌスほど極端ではありませんが、繁殖期における男性ホルモンレベルの上昇によって一時的に食欲が抑えられるということはありうるでしょう。 繁殖期においてはオスの食欲が減ってメスの食欲が増える  一方メス猫の場合、繁殖期で妊娠した後に食欲の急激な増進が起こります。これは体内に脂肪を蓄積し、それを元にして母乳を生成するためです。妊娠期における食欲増進は通常の1.6~2倍、母乳を生成する泌乳期にあたっては2~6倍に激増することもあります。しかしこの現象は一時的なもので、通常は子猫が生後3週齢を越えて離乳が始まった頃から母猫の食欲も少しずつ元のレベルに戻っていきます。

異常な食欲とは?

 上記したような項目は多くの猫に共通することであり、連動して起こる食欲の変化は正常の範囲内だと考えられます。しかし中には、こうした項目だけでは説明のつかない食欲の異常が見られることがあります。例えば夏なのに食べる量が増えたとか、妊娠しているのに食欲が減ったなどです。異常食欲とでも言うべきこうした現象には一体どのようなパターンがあり、どのような原因と対策があるのでしょうか?食欲と食事量が減ってしまう「食欲不振」と、逆に増えてしまう「食欲増進」に分けて見ていきましょう。
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食欲不振の原因と対策

 食欲不振で問題となるのは肝リピドーシス(脂肪肝)です。これは肝臓に脂肪がたまって機能が損なわれた状態のことで、本来肝臓から脂肪組織へと移動するはずの脂肪が、なぜか肝臓内にとどまってしまうことが原因で発症します。詳しいメカニズムはまだ解明されていませんが、成猫では絶食が2~14日続くと発症すると考えられています。ですから食欲不振の目安としては「36時間何も食べていない」とか「3日間における食事量が通常の半分」などが妥当だと考えられます。飼い主はただ漫然とエサの用意をするのではなく、1日でどのくらい食べたかをこまめにチェックするようにしましょう。
授乳期の食欲不振 授乳期の子猫における食欲不振で問題となるのは肝リピドーシスよりも低血糖です。子猫における絶食の限界は24時間と考えられていますので、大事を取って18時間ミルクを飲まない場合は動物病院に相談しましょう。原因を突き止めると同時に静脈注射などで強制的に血糖値を維持する必要があります。

病気による食欲不振

 食欲不振の原因としてまず真っ先に考えなければならないのは病気の可能性です。食欲不振を引き起こす病気は山ほどあり、ここではすべてを書ききれませんので詳しくは食欲不振・あまり食べないときをご参照下さい。以下では代表的な病名だけ簡潔にリスト化します。
猫の食欲不振を引き起こす病気
 上記したような疾患は手をかざしてわかるわけではありませんので、必ず動物病院を受診して診断してもらって下さい。病気を放置した状態でその他の食欲不振対策を行っても、全く意味がないばかりか逆に猫の健康を悪化させてしまいます。

エサの食感や味が嫌い

 猫の好き嫌いでも述べたとおり、猫は味にうるさい部分があります。味、食感、温度、匂いなど、猫にしか分からない微妙な変化が、食欲を大きく左右することもあるわけです。
 猫の好き嫌いを知る方法の一つとして、「しぐさを見る」というものがあります。2016年に行われた最新の調査によると、猫が「おいしい」と感じた時のリアクションは「目を半分以上閉じる」「舌を突き出す」「口を開閉する」で、逆に「まずい」と感じた時のリアクションは「口を開けて舌を出す」であるという可能性が示されました。こうした猫のしぐさを見ていると、そのエサが合っているかどうかのヒントになるかもしれません。写真付きのより詳しい解説はこちらの記事をご参照ください。 猫は食事が気に入ると目を半分以上閉じ、気に入らないと口を開けて舌を突き出す  なお、猫は食事のこだわりに関してかなり頑固です。栄養的に完璧なエサでも、口に合わないときは長い間拒絶し、中には、餓死を選ぶものもいると言います(Kane, 1987)。人間で言うと「ハンスト」と言った所でしょうか。
食べさせる方法  ドライフードの食感に変化をつける場合は、水を加えて柔らかくする、ウェットフードを混ぜる、軽くフードプロセッサに掛けて粒を小さくする、などの方法があります。またエサの温度に関しては、匂い成分が揮発しやすい人肌程度が最も好まれますのでレンジで軽く温めるのも効果的でしょう。

栄養素が合わない

 猫の体内には「栄養素センサー」のようなものが備わっており、エサに含まれる栄養素が体の要求と合っていない場合、潔く空腹を選ぶことがあります。
 詳しくは猫の栄養バランスでまとめてありますが、ペットフード会社が中心となって行った複数の給餌試験によると、猫がエサを選ぶ時の基準は「カロリーの中でタンパク質が占める割合が最終的に50%になること」および「炭水化物の摂取量が3g/kg(トータルで約70kcal)という上限を超えないこと」という2点に集約されます。つまりフード中のタンパク質含量が少なかったり、炭水化物含量が多かったりすると、猫はどんなに空腹でも食べることを拒絶してしまうのです。そしてこの拒絶反応は、フードの味や匂いをどんなに調整してもリセットできないとのこと。
食べさせる方法  フードの成分をよく見て、高タンパク・低炭水化物のものを選ぶようにします。通常のフードのほか、鶏のササミのような栄養補助食品を添えるのも効果的でしょう。猫の大好物であるマグロも高タンパクですが、近年は水銀が含まれている危険性が指摘されていますので(→詳細)、1週間の摂取量が20g(刺し身2切れ)程度になるよう抑えたほうが無難だと思われます。

エサに飽きた

 たとえ完全栄養食であっても一種類のフードを長期間与え続けると他のフードを好む一時的な「浮気心」が出現することがあります。これは子犬、子猫、ペットを含む成猫、成犬の全てにおいて証明されている普遍的な現象です(Mugford, Hegstedなど多数)。
食べさせる方法  猫がエサに飽きたからといって今までのフードをいきなり総交換すると、胃腸がビックリして吐き戻してしまうことがあります。ですからまずは全体の10%程度を他のエサに切り替えて様子を見ます。好みのエサが見つかるまで10種類以上試すことも珍しくありませんので、「カフェテリア方式」で気長に試行錯誤を繰り返します。

新しいエサが嫌い

 猫にはネオフォビアと呼ばれる現象がしばしば見られます。これは、目新しいものを避ける傾向のことです。
 6ヶ月齢までに様々な食物を経験しなかった場合、食物に対する好みは極めて限られたものとなり、数種類以外の食事以外は拒否することもあると言われます。こうした環境で育った子猫は、後に新しい食事に対してネオフォビアを示し、食べ物を一切受け付けなくなることがあります。
食べさせる方法  新しいエサに切り替えた途端、食欲がなくなったという場合は、元のエサに戻してみます。もし食欲が回復するようでしたら、猫に多少ネオフォビア傾向があると考えたほうがよいでしょう。
 それでもどうしてもエサの切り替えを行う必要がある場合は、まず全体の10%程度を他のエサに切り替えるところから始めてみます。

味覚嫌悪

 「味覚嫌悪」(みかくけんお)とは、一度口に入れて不快感を味わったものに対し、強い嫌悪感を示す現象のことです。この現象は新しいエサに対してのみならず、今まで食べていたなじみのエサに対しても生じる現象です。
味覚嫌悪~一度嫌いになったものに対しては、容易に心を開かない  実験では、不快な塩化リチウムの入った食事を1回口にしただけで、その後3日間、同じフードを食べようとせず、10~20日後の間でようやく2回ほど口を付けるようになったと言います。また、もう安全であると学習した後でも、同種のフードを避ける傾向が40~80日間続いたとか(Mugford, 1977)。このように猫は、一度「まずい!」と思ったものに対しては、その後、長期間に渡って嫌悪感を抱き続ける傾向があるのです。
 この味覚嫌悪には、さらにやっかいな点があります。それは、口に入れたものが体調不良を引き起こしたかどうかに関わらず、直前に食べたものを嫌いなるという点です。例えば、朝にホタテを食べた猫が、夕方になって腹痛に見舞われたとします。腹痛の原因がホタテではなかったとしても、猫は「ホタテのせいでおなかが痛くなった!」と勝手に解釈し、以後、ホタテ嫌いになってしまうのです。ですから、昨日まではガツガツと食べていたにもかかわらず、翌日になると急に食欲不振に陥るということが、大いにありえます。
食べさせる方法  「いつも与えているエサ」と「新しいエサ」を別々の容器に入れて猫の前に出してみましょう。体調不良の原因を「いつものエサ」と誤解してしまった猫でも、新しいエサなら食べてくれるはずです。このとき、においや食感がなるべく異なるエサを用意した方がうまくいくでしょう。

暑い!

 人間同様、あまりにも暑いと体温調整の方に神経を奪われ、夏バテに似た状態になり食事どころではなくなってしまうことがあります。また外気温が高いため体温を維持するためのエネルギー消費量が減り、それに連動して食欲が減るというパターンもあるでしょう。いずれにしても食欲の減退が夏季の間に限定されている場合、暑さが一因と考えられます。
食べさせる方法  室内が暑いにもかかわらずエアコンをつけていないような場合は、電気代をケチらずに付けてあげましょう。猫は人間と違って汗をかきませんので扇風機をつけても体温は下がってくれません。最悪のケースでは熱中症にかかって死んでしまいますので、暑くなりすぎないようしっかりと室温調整してください。また、猫を放し飼いにしており外気と接する機会がある猫に関しては、完全室内飼いに切り替えます。猫の体温調整猫が喜ぶ部屋の作り方

ワクチンを打った

 感染症予防のためのワクチンを打った直後、一時的に食欲を失うことがあります。同様に、虫下しのスポット薬を滴下したり、錠剤を飲ませた後、一時的に元気を失うことがあります。
食べさせる方法  食欲不振は一時的なものですので、時間が経過するとともに回復していきます。ただし36時間たったにも関わらず食事に口をつけようとしない場合は動物病院にご相談ください。場合によっては食欲増進剤の投与や強制給餌が行われます。

食器が気に食わない

 不潔、キラキラ輝く、食べているうちにずれる、他の猫の唾液がついているなど、様々な理由で食器を嫌うことがあります。また底の深い器の場合、器のへりがヒゲに触れていらつくというパターンもあります(ウィスカーストレス)。
食べさせる方法  常に清潔な食器を使うのはもちろんのこと、今まで使っていた食器とは別の素材に換えてあげましょう。例えば、ステンレスの安物ではなく安定感がある陶器製の食器などです。またエサを平べったいお皿に入れ替えたり、きれいなシートの上にばらまくように広げると、急に食べてくれることがあります。食器を床に置いてる場合は、頭を下げなくても食べられるよう台の上などに置きなおしてあげましょう。猫に必要なえさ・食事グッズ

環境ストレス

 食餌中の猫を取り巻く環境に何か気に食わない点があると、食欲に影響することがあります。例えば「お客さんが来ている」とか「新参の猫がやってきた」とか「引っ越して部屋の様子ががらりと変わった」とか「見知らぬ猫がたくさんいるペットホテルに預けられた」などです。
食べさせる方法  環境ストレスに起因する食欲不振に関しては、猫が安心できる状況をセッティングしてあげることが解決策です。猫はやや暗くて周囲を囲まれた食餌環境を好むことがある具体的には、壁際にキャリーを置いたり、部屋の一角をパーティションで仕切るなどして、猫専用の食餌スペースを作ってあげるという方法があります。人間でいう「個室ダイニング」のように、周囲を囲まれていた方が落ち着いて食事ができるという猫もいるでしょう。ポイントは「食餌中の姿が見えないようにする」ことと「周囲をやや暗くする」ことです。こうしたセッティングによって「外敵に邪魔されるかもしれない!」という本能的な防衛心を解除できれば、自然な摂食行動を促せる可能性があります。

食事の時間が変わった

 普段、一定の時刻にエサを与えている猫の場合、その給餌時間が変わることで食欲を失うことがあります。これは生活のリズムが狂わされたことによる一時的な食欲不振だと思われます。
食べさせる方法  何度も繰り返しているうちに、猫が新しい食事の時間を学習して食べてくれるようになりますので特殊な対策をする必要ありません。どうしても食べようとしない場合は、猫を食器の前に連れて行ったり、飼い主の手から餌を食べさせてあげましょう。

エサやり人

 猫が自由に外出できる家庭においては、近所のエサやり人が勝手にエサを与えている可能性があります。こうしたつまみ食いをしている猫においては、食欲が無いように見えるのは当たり前です。
食べさせる方法  事故や病気を予防するという意味でも、猫の放し飼いをやめて完全室内飼いに切り替えることをお勧めします。外にいる猫を対象とした調査では、ゴミ、昆虫(バッタやトンボ)、無脊椎動物(ミミズやナメクジ)など、ありとあらゆるものを食べることが確認されています。可愛いペットがえげつない物を口にしないよう、しっかりと室内で食事の管理をしてください。 猫をどこで飼うか?

加齢

 猫が年を取ると歯の経年劣化により、あまり堅いものを食べなくなることがあります。また食欲を落とすような慢性腎不全などの疾患を抱えており、食事量が落ちるということも考えられます。こうした老化現象は飼い主の目には「食欲がない」と映るかもしれません。
食べさせる方法  歯が悪くて堅いものを噛めないような場合は、ドライフードからウェットフードに切り替えてあげましょう。歯への負担が減って飲み込みやすくなります。口内炎がひどい場合はレーザーによる切除が行われることがあります。また歯周病がひどい場合は時として抜歯が行われます。猫は人間と違って口の中で咀嚼しませんので、歯が1本もなくても意外と困る事はありません。 猫の老化・老衰

鼻詰まり

 猫が食事を選ぶ際の最大の要因は匂いです。匂いを脳に伝える「嗅球」(きゅうきゅう)を切除した猫では、極端な食欲の低下が見られたといいますので、単純に鼻づまりなどの呼吸器系疾患が食欲の減退を招いている可能性もあります。
食べさせる方法  ウイルスと接触する可能性の高い放し飼いをやめ、ワクチン接種を施すことです。そうすることで、猫の鼻詰まりの原因となる感染症を予防することができるでしょう。また猫ヘルペスが再発して鼻が詰まっているような場合は、猫の免疫力が落ちないようストレス管理をすることが最善策となります。 猫のストレスチェック猫のワクチン接種

よく分からない…

 猫の食欲不振の原因がどうにもこうにもわからない場合は、最後の手段として以下でご紹介する方法を試してみてはいかがでしょうか。
猫のフェイシャルフェロモンを商品化した「フェリウェイ」  2000年に行われた実験で、人工のフェイシャルフェロモンが、猫の食餌量を増やすという可能性が示されました(→Cerissa A, 2000)。「フェイシャルフェロモン」とは、猫の頬から分泌される、猫にしか感知できない微量分子のことです。
 実験では「健康な猫2匹+病気の猫8匹」及び「健康な猫5匹+病気の猫5匹」とに分けられ観察が行われました。前者の環境が「フェイシャルフェロモン+キャリー」であるのに対し、後者の環境は「フェイシャルフェロモンのみ」です。その結果、どちらのグループでも食べ物に対する興味と摂取量が増え、特に「フェイシャルフェロモン+キャリー」のグループにおける増加が顕著だったとのこと。
 この事実から、身を隠せる場所とフェイシャルフェロモンを組み合わせると、猫の食欲を増進できる可能性が示されました。何をやってもうまくいかないときは、室内環境を見直し、市販されている「フェリウェイ®」などを利用してみるのも一案でしょう。 猫のフェイシャルフェロモン
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食欲増進の原因と対策

 猫の食欲増進で問題となるのは肥満です。いわゆるデブ猫の状態と言えばわかりやすいでしょう。体に脂肪が蓄積した状態では関節や心臓への負担が増えるほか、糖尿病の発症リスクが増えてしまいますので、猫の食欲を適正なレベルにとどめておかなければなりません。猫の食欲増進を引き起こす具体的な原因と対策は以下です。

病気による食欲増進

 猫の食欲増進でまず真っ先に考えなければならないのは病気の可能性です。具体的には以下のような疾患が猫の食べ過ぎを引き起こします。
猫の食欲増進を引き起こす病気
 リンク先のページを確認し、食欲増進以外の症状が見られないかどうかを確認します。もし当てはまる項目が多く、病気の可能性が強く疑われる場合は動物病院を受診して血液検査などをしてもらいましょう。
 上記した疾患のほか、脳の変性が猫の食欲を減退させるというパターンもわずかながらあります。例えば脳の「外側視床下部」(がいそくししょうかぶ)という部分を刺激すると摂食量が大きく増加し、破壊すると無食症になると言います。また「腹内側視床下部」(ふくないそくししょうかぶ)を刺激すると、逆に食欲減退が起こり、破壊されると過食症になるとも。
 このように、脳内の変化が猫の食欲を変化させる可能性もありますので、猫に「頭を打った」「頭から血を流している」「たんこぶができている」などの徴候がある場合は、その後の食欲に変化がないかどうかを注意深くチェックします。

野良からペットになった直後

 今まで屋外で野良生活をしてきた猫が、至れり尽くせりのペット猫になった直後、食欲の異常な増進を見せることがあります。これは「食べ物があるうちになるべくたくさん食べよう!」という野良猫時代の習慣から生まれる行動です。
食欲を抑える方法  競争相手もおらず、焦って食べなくてもエサが消えることがないことを学習すれば自然と食べ過ぎは治まりますので気にする必要はありません。ただ肥満に陥らないよう、無制限に与えるのではなく食事量は必要最小限に抑えてください。

飼い主による甘やかし

 猫は基本的に自分の体に必要なカロリー数を理解しており、放っておいても食べ過ぎに陥るということはありません。しかし近年行われた調査により、飼い主による甘やかしが猫の食べ過ぎおよび肥満を引き起こしているという可能性が示されました。
 2015年、日本獣医生命科学大学のチームが日本全国に散らばる18の動物病院において、猫の肥満の指標である「BCS」を用いた体格評価を行ったところ、「太り過ぎ」を表す「BCS4」および「肥満」を表す「BCS5」の割合が、全体の56%に達したといいます。さらに「BCS5」だけをみると、全体の42%という高い割合を占めていたとも。
 本来、食べ過ぎに陥ることが少ないはずの猫でこれほど多くの肥満が見られる理由は、おそらく飼い主が甘やかしたからだと推測されます。
食欲を抑える方法  最近は猫の食いつきが良いペースト状のおやつ(ちゅーるなど)がたくさん出回っていますので、ついつい与えすぎてしまいます。おやつとして与えるカロリー数を計算し、その分を食事から差し引いて与えましょう。最新の調査では、食事を制限することで猫から飼い主への愛情が深まると報告されていますので、「嫌われるんじゃないか…」と心配する必要はありません。

エサの出しっぱなし

 猫にエサを与えるときの方法には、エサの量と摂取カロリー数だけを飼い主がコントロールする「定量給餌法」、エサを与えるタイミングだけを飼い主がコントロールする「定時給餌法」、そしてエサをいつどれくらい食べるのかを猫に任せる「自由採食法」などがあります。最後に挙げた自由採食法の場合、基本的にはエサを出しっぱなしにしますので、猫の食べ過ぎを引き起こしてしまう可能性があります。
食欲を抑える方法  エサの量と摂取カロリーを飼い主が管理する「定量給餌法」に切り替えます。この場合エサは出しっぱなしでも構いませんが、エサの鮮度が落ちたり部屋の中がフード臭くなるといったデメリットがあります。エサを与えるタイミングを管理する「定時給餌法」に切り替えた場合は、1回の食事量が増えて胃腸への負担が増えるというデメリットがあります。またインスリンの急激な放出が起こって糖尿病を発症しやすくなるリスクも否定できません。

室内が寒すぎる

 猫は恒温動物ですので体温を正常範囲内にキープしなければなりません。冬は外気温が低いため、たくさんエネルギーを消費して体温を維持し、逆に夏は外気温が高いため、努力しなくても体温が維持されます。猫の食欲が夏場に減って冬場に増えるという季節変動を見せるのはこのためです。しかし室内でエアコンをガンガンに利かせているような場合、夏であるにもかかわらず周辺環境が寒くなりエネルギーの消費量が増えてしまうことがあります。
食欲を抑える方法  エアコンが20℃くらいに設定されており室内が冷えすぎているような場合は、25~26℃に設定しなおします。暑くも寒くもない適温ですので、体温を維持するための消費エネルギーが減って食欲(食事量)も元に戻るでしょう。もちろん電気代の節約にもなります。

去勢・避妊手術

 オス猫でもメス猫でも不妊手術を施した後に太りやすくなるという現象が確認されています。この現象が「食欲の増進」によって引き起こされているのかそれとも「消費エネルギーの減少」によって引き起こされているのかはよくわかっていません。しかし消費エネルギーよりも摂取エネルギーの方が多いというアンバランスが生まれていることは確かですので、食欲を抑えて食事量を減らさなければ延々と肥満は治らないでしょう。
食欲を抑える方法  そもそも去勢や避妊手術を行わないという選択肢もありますが、猫の不妊手術には食欲増進といった些末な問題を遥かに凌ぐ多くのメリットがありますのでおすすめできません。ですから不妊手術を行った後、カロリー数を15~20%減らすという形で対処しましょう。
 最初のうちはミャーミャー鳴いておかわりを要求してくるかもしれませんが、無視しているとそのうち諦めて食欲も適正化します。おねだりに負けておやつ与えてしまうと肥満の原因になりますので気をつけてください。最新の調査では、猫に対する食事制限は飼い主に対する反感ではなく愛情を強めると報告されていますので、「嫌われるんじゃないか…」と心配する必要はありません。猫の去勢と避妊手術
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