トップ愛猫家の基本「猫を捨てる」その前に

「猫を捨てる」その前に

 何らかの事情で猫を捨てたいと考えている方は、以下に述べる原因の中から思い当たるものを選び、それに対応した解決策を試みて下さい。

飼い主の側の事情

 以下では、飼い主の側の事情により、ペットの飼育が困難になった場合の対処法を解説します。

アレルギーの発症

 猫を迎えたはいいものの、自分、もしくは家族の誰かにアレルギー症状が出てしまい、飼育が困難になるというパターンがあります。しかしアレルギーの原因となる物質は、日頃からの努力によってある程度減らすことができます。猫アレルギーについてを読み、実践可能な部分を試してみて下さい。

引越し

 引越し先で「ペット飼育可」の物件を見つけることができないという場合は、ペットの飼育が許可されている物件を頑張って見つけましょう。「家賃がやや高くなる」、「駅から遠くなる」といった悪条件は、猫の命運を考えれば乗り越えられないものではないはずです。

家主とのトラブル

 「ペット飼育不可」の物件でペットをこっそり飼っていたのが家主にばれてしまったという場合は、ペットの飼育が許可されている物件を頑張って見つけましょう。「家賃がやや高くなる」、「駅から遠くなる」といった悪条件は、猫の命運を考えれば乗り越えられないものではないはずです。また居住者の4分の3以上の賛成を得ることができれば、管理規約自体を改正できる可能性があります。居住者全員を集めて説明会を開いたり話し合いの場を設けて一定数以上の賛成が得られるよう努力してみましょう。

飼育費用

 猫の飼育費用がかさみ、生活に支障をきたすという場合は、まず自分自身の生活費を節約し、ペットの飼育費用を捻出する努力をします。外食の頻度を抑え、自炊の割合を増やすだけで、ずいぶんと生活費の節約になります。また、月々の出費明細を把握していない人は、家計簿を付けるようにします。日々の現金出納を数字で残しておくと、一体どこに無駄があるのかを見つけやすくなるでしょう。その他の細かな節約術に関しては、節約術100などもご参照下さい。

猫に時間を取れない

 入院、出張、旅行などにより、長期間ペットに対する適切なケアを施せないような場合があります。そんな時は、飼育経験のある友人に頼んだり、有料のペットシッターやペットホテルに依頼するという方法があります。業者に依頼する場合は、ペット関連施設・電話帳検索が役に立つでしょう。「ペットシッター」や「ペットホテル」をキーワードにして検索をかけてみて下さい。

飼い主の妊娠・出産

 妊娠や出産をきっかけに、「猫が赤ちゃんを傷つけたらどうしよう…」という不安に駆られる人がいます。もし猫が、日頃から飼い主に対して何らかの攻撃性を示しているような場合は、猫のひっかき・噛む癖を読み、猫の攻撃性を緩和するよう努めます。また猫のストレスチェックを読み、攻撃性の原因となっている欲求不満についての理解を深めることも重要です。
 それでも攻撃性が残っている場合は、「隔離」を選択肢として考えます。これは、赤ちゃんと猫が接触できないよう別々の部屋に入れ、物理的なコンタクトを断ってしまうという方法です。ただし「一日中ケージに閉じ込める」という方法は、それ自体が動物虐待に相当しますので避けて下さい。その他、妊娠と出産に関わる漠然とした不安事項については、以下のページにもまとめてありますのでご参照ください。 赤ちゃんと猫

飼い主の死去

 高齢、病気、事故などで飼い主が死んでしまった後、猫が保健所送りになるという状況も充分ありえます。このパターンを避けるためには、「負担付遺贈」、「ペット信託」、「老猫ホーム」といったシステムを利用するのが有効です。経済的な負担を要求されますが、猫の命には代えられないでしょう。
死後のペットの扱い
  • 負担付遺贈 「負担付遺贈」(ふたんつきいぞう)とは、遺産を残す者が遺産を受け取る者に対して、「財産を残す代わりに、一定の義務を負担してね」とお願いすることです。日本では法律上、ペットに直接遺産を残すことはできません。しかし上記「負担付遺贈」の形式に則(のっと)り、「ペットを世話してくれることを条件に遺産を残します」という遺言を書いておけば、間接的にペットに遺産を残すことができます。
  • ペット信託 「ペット信託」(ぺっとしんたく)とは信託法に基づいたシステムのことです。まず、飼い主を代表にした管理会社を設立し、ペットに残したい財産を事前に管理会社に移しておきます。そして、死後の飼い主を「受益者」として指名した遺言書を用意し、さらに「ペットの飼育のために」と記した信託契約書をその「受益者」と締結します。このように、生前の遺産を飼育費として相続してもらうシステムが「ペット信託」です。メリットは、相続された飼育費が適切に使われているか監督する制度がある点、および相続財産の乱用を防ぐため一度に相続させず、分割することができる点などです。
  • 老猫ホーム 「老猫ホーム」とは、基本的には高齢の猫の世話を引き受ける施設のことですが、飼い主が死んだ後のペットの引き取り先としての役割もあります。料金やサービス内容を事前によく確認し、また十分な設備が整っているかどうかをしっかりと確認した上で選定するようにします。
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猫の側の事情

 以下では、猫の側の事情により、ペットの飼育が困難になった場合の対処法を解説します。

望まない猫の妊娠や出産

 猫が望まない妊娠や出産をしてしまった場合、飼い主の側に何の知識もないと、明確な根拠もなく「自分には無理だ!」と決め込み、安易な飼育放棄に走りやすくなります。ですからまず猫の交配・妊娠・出産子猫の育て方を読み、事前に知識を得ておきましょう。決して楽ではありませんが、子猫が生まれてから最初の半年間を乗り切れば、生活も落ち着き、愛情も芽生え、「子猫を捨てる」などという選択肢はなくなっているかもしれません。また再発を予防するため、猫を完全室飼いにし、不妊手術を徹底します。

不適切な排泄

 猫のトイレの失敗には、何らかの理由でいつも使っていたトイレを使わなくなる「粗相」と、繁殖期に合わせておしっこを振りまく「マーキング」とがあります。どちらのパターンにしても、それなりの原因と解決策がありますので、猫にトイレをしつけるや、猫のトイレの失敗などを読み、再発予防に努めます。2014年に日本で行われた調査によると、「保護猫を引き取った後の満足度と粗相の頻度とは反比例する」という結果が出ています。たとえ数回なら我慢できるものでも、数十回やられるとジワジワ腹が立ってくるものです。飼い主と猫の関係崩壊を予防するためにも、トイレの問題は早急に解決した方がよいでしょう。

病気・高齢

 猫が病気にかかったり病気になったりすると、医療費がかさみ、気持ちが重くなり、付き添いの手間が増えます。まずは猫の老化と介護を読み、心の準備を整えましょう。また近年は「老猫ホーム」という施設も増えてきています。これは高齢の猫や介護が必要な猫の世話を有料で引き受けるサービスのことです。経済的な負担を必要としますが、猫の命には代えられません。

野良猫を拾った

 野良猫を拾ってきたけれども、家族の反対に遭うという状況がしばしば発生します。家族全員から歓迎されていない環境で猫を迎え入れる事は、家族にとっても猫にとっても酷です。そういう場合は、保健所や動物愛護センター連れて行くのではなく、まずは身近なところから飼い主の候補者を探してみます。具体的にはどうしても飼育が困難なときをご参照下さい。また子猫を拾ったはいいが、育て方が分からないという場合は、子猫の育て方が役に立つでしょう。もし猫を飼う前に必要な条件をクリアできるようでしたら、ぜひそのままペットとして迎えてあげて下さい。

迷い猫を見つけた

 首輪がついており、明らかに誰かが飼っていると思われる猫が自宅に迷い込んできた場合は、ひとまず逃げないように家の中に隔離して下さい。その後にすべきことを以下に列挙します。
迷い猫を見つけたら
  • 迷子札の確認 首輪に迷子札がついており、連絡先が記載されていれば、そこに連絡して飼い主に引き渡します。
  • 警察への問い合わせ 最寄りの派出所に迷子猫の捜索願が出ていないかを確認しましょう。飼い主が警察に報告している場合は、その時点で手がかりがつかめるかもしれません。
  • インターネットの利用 インターネット内の「迷子猫、保護猫掲示板」や「迷い猫.NET」といったサイトを確認し、捜索願の有無を確認すると同時に、保護している旨を告知します。
  • マイクロチップの確認 近くの動物病院などに問い合わせ、「マイクロチップリーダー」があるかどうかを確認しましょう。もしある場合は、猫をキャリーに入れて病院へ赴き、体をスキャンしてもらいます。マイクロチップが入っている場合は、スキャンした情報から飼い主を特定することができます。
  • 迷子チラシの活用 近所を歩き回り、「猫を探しています」というチラシが無いかどうかを確認しましょう。無い場合は逆に、「猫を預かっています」という告知チラシを貼ることも有効です。
  • 保健所への確認 地域の保健所や動物愛護センターに問い合わせ、捜索願が出ていないかどうかを確認します。
 なお、くれぐれも保健所や動物愛護センターには連れて行かないで下さい。多くの場合は、収容期間内に飼い主と再会することができず、殺処分という憂き目に遭います。

猫の破壊行動

 猫が壁や家具などで爪とぎをしてボロボロにしてしまうような場合は、猫の爪とぎのしつけを読み、予防に努めます。

猫の騒音

 猫が飼い主の関心を引こうとして鳴きわめくような場合は、過剰に関心を求めるを読み、予防に努めます。また繁殖期に伴って絶叫するような場合は、不妊手術を施すことによって軽減する可能性があります。

人や他の動物への攻撃性

 猫が飼い主や同居している他のペットへ攻撃性を見せるような場合は、猫のひっかき・噛む癖を読み、予防に努めます。また猫のストレスチェックを読み、攻撃性の原因となっている欲求不満についての理解を深めることも重要です。

猫がなつかない

 猫がなかなかなついてくれず、愛情が芽生えないような場合は、まず猫に対する過剰な期待を改めます。BarryとCrowell-Davisの研究(1999)によると、「猫は性格にかかわらず、 1日のうちの約50%は他の動物から見えない場所に隠れて過ごす」といいます。こうした「お一人様」傾向が強い猫に対し、犬のような忠誠心や愛嬌を期待するのは、そもそも無理です。猫と言う動物が持つ習性をあらかじめ理解し、過剰な期待を抱かないことが、同棲生活を長く続けるためのコツです。また猫のストレスチェック猫と遊ぶなどを読み、猫の欲求不満を解消してあげると、比較的早くなついてくれるでしょう。

猫と子供の折り合いが悪い

 やんちゃな子どもは時として、猫の機嫌を無視してコンタクトを取ろうとします。その結果、猫の機嫌を損ねてしまい、猫パンチの犠牲になってしまうこともしばしばです。そういう場合はまず猫の心を読む訓練を子供に読ませ、猫の表情や姿勢から心理状態を読めるようになることが重要です。そしてコンタクトを無理強いするのではなく、猫から接触を求めてきたときにだけ相手をしてあげるという方針に切り替えます。

猫の問題行動

 「高いところに登りたがる」、「不適切なものに吸い付く」、「変なものを食べる」、「夜中に運動会を開く」、「夜泣きをする」など、猫でよく見られる問題行動に関しては、やんちゃ猫のいたずらで解説してありますのでご一読下さい。

脱走・迷子

 猫が家の中から脱走してしまったり、あるいは外に行ったまま戻ってこないというような場合は、迷子猫の探し方を読み、できるだけ早く行動を起こすようにします。猫が居なくなってから捜索活動を始めるまでのタイムラグが短ければ短いほど、発見率は高まります。また再発を予防するため、不妊手術を施して放浪欲求を減らし、放し飼いから完全室内飼いに切り替えるようにします。
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やってはいけないこと

 猫の飼育が困難になったとき、飼い主が犯してしまう過ちが三つあります。一つは「虐待」、一つは「飼育放棄」、そしてもう一つは「遺棄」です。

猫への虐待

 猫への「虐待」とは、猫に苦痛を与えるような行為全般のことです。こうした行為は、飼い主が意図的に虐待行為に関わる「積極的虐待」と、逆に何もしないことで虐待行為に関わる「消極的虐待」とがあります。後者は特に、「動物を無視する」という意味合いから、英語で「ネグレクト」(neglect, ニグレクトとも)と呼ばれます。
積極的虐待
  • 殴る・蹴る
  • 熱湯をかける
  • 動物同士を闘わせる
  • 恐怖を与える
  • 酷使する
  • 大量飼育する(ホーディング)
ネグレクト
  • 病気や怪我を放置する
  • エサや水を充分に与えない
  • 狭い場所に長期間閉じ込める
  • 体の手入れを行わない
  • 運動をさせない
  • 暑い(寒い)環境に放置する
  • 社会的接触を持たない
 ペットへの愛情が薄れてしまった飼い主は、時として上記したような行為に関わってしまいます。動物に何かをするだけでなく、逆に何もしないこと自体が虐待行為となってしまうこともあります。たとえ動物との心のつながりが切れてしまったとしても、決してやってはいけない行為です。
虐待の違法性  動物の愛護及び管理に関する法律の第六章(罰則)では、愛護動物に対する積極的・消極的虐待を、「犯罪行為」として規定しています。すなわち動物の虐待は、道義的にも法的にも許されない行為なのです。

猫の飼育放棄

 猫の「飼育放棄」とは、負担になった猫を保健所や動物愛護センターなどの行政機関に丸投げしてしまうことです。下のグラフで示すように、ひとたび行政に引き取られると、その90%は殺処分されてしまいます。殺処分とは、健康な猫を炭酸ガスで窒息死させることです。
殺処分数と譲渡・返還数の割合(H24年度版)
殺処分数と譲渡・返還数の割合を示す円グラフ  「猫を行政に引き渡すこと」と、「猫を殺すこと」とは、ほぼ同義であることがお分かり頂けるでしょう。「愛護センター」という言葉の響きに惑わされ、「施設の中でのんびり余生を過ごすのかな」というお気楽な勘違いをしている人がたくさんいます。しかし、実際に行われているのは、ガス室における流れ作業的な大量殺戮なのです。ペットを安易に飼育放棄する人は、この殺処分に加担しているという自覚を持つ必要があるでしょう。

猫の遺棄

 猫の「遺棄」とは、負担になった猫を道端に捨ててしまうことです。以下のグラフで示すとおり、「所有者不明の引き取り」という形で行政機関に送られる猫の数が、年間10万匹を超えています。この中には当然、飼い主によって遺棄された猫も含まれており、その行き着く先は殺処分です。
平成24年度・行政による猫の引き取り
平成24年度における、行政による猫の引き取り~所有者不明の捕獲  また猫の遺棄には別の問題も付随します。それは、「エサやりおばさん」や「エサやりおじさん」によって養われた一部の野良猫たちが繁殖を繰り返し、子猫がどんどん増えてしまうということです。上のグラフで示したように、行政に引き取られた所有者不明の猫のうち、約8割は子猫によって占められています。これらの子猫は多くの場合、野良猫が屋外で産み落とした猫たちです。そしてこれらの子猫が行き着く先も、やはり殺処分なのです。
 かつて、虐待によって命を落とした子猫「こげんたちゃん」事件に対し、多くの人が怒りを覚え、そして涙を流しました。一方、こうしたセンセーショナルな出来事の裏で、やはり同じように人間のエゴによって殺されている子猫たちがたくさんいます。目に見えないため見過ごされがちですが、ペットを遺棄する人間たちが、間接的に子猫の殺処分に加担しているという事実にも、目を向けなければならないでしょう。
遺棄の違法性  動物の愛護及び管理に関する法律の第六章(罰則)では、「愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する」と規定されています。すなわち動物の遺棄は、道義的にも法的にも許されない行為なのです。ダンボール箱に入れた子猫を、動物愛護センターや猫カフェの前に置き去りにするという行為は、全て犯罪に該当します。
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どうしても飼育が困難なとき

 あらゆる対策を講じても、「どうしても飼育が困難」と判断される場合は、以下のような代替案を試してみて下さい。

知人を当たる

 まずは知り合いを通じて引き取ってくれる人を探します。その際、見切り発車や軽い気持ちで引き受ける人もいます。最悪のケースでは「再放棄」という事態も起こりえますので、必ず猫を飼う前に必要な条件をクリアした人だけにお願いするようにしましょう。また、可能であれば、飼育初心者よりも、飼育経験がある人にお願いした方がベターです。

インターネットを利用する

 知り合いに頼める人がいない場合は、インターネットを通じて里親を募集することもできます。具体的には民間団体の里親募集案内などに問い合わせ、養子縁組をお願いします。

再発予防のために

 猫の遺棄や飼育放棄の原因は、多くの場合解決・予防が可能です。Patronekが1996年に行った研究によると、猫の飼育放棄をした人には以下のような共通項が見られたといいます。 The Welfere of Cats(Springer)
飼育放棄者の共通項
  • 猫に不妊手術をしていない
  • 猫が自由に外出できる
  • 猫が不適切な排泄をする
  • 猫に対する過剰な期待がある
 上記した通り、これらの項目は全て解決・予防が可能です。飼育放棄や、それに続くペットの殺処分という社会問題を解決するためには、猫を飼う前に必要な条件をクリアすることはもちろんのこと、以下に述べるようなページを読み、あらかじめ知識を蓄えておくことも重要です。
飼育放棄を予防するために
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